「少数で多数を撃破する戦いが、何故有名になると思う?そんな例はめったにないからだよ。100の会戦のうち99までは兵力の多い方が勝つ」
むろん、ただ多いだけではダメで、彼らには十分な食料と武器弾薬を補給し、戦場や戦況に関する正確な情報を与えなければならない。そして、戦場において最も有能に部隊を指揮しうる者を選んで、必要な場所に配置する。そしてそこからが、ようやく戦術家の出番なのだ。
「戦略は構想だ、と私は言ったけど、あるいは価値判断だというべきかもしれないね。戦略の段階で最善を尽くしておけば、戦術レベルでの勝利は得やすくなる。なあ、ユリアンは、私は奇跡を生むとか一部で言われているけど、それは戦術レベルでのこと。戦略レベルでは奇跡も偶然も起こりっこない。だから戦略こそ、本当に思考する価値があるんだよ」
(解説)
小よく大を制すは我々を魅了するが、現実的には兵力を十分に備えた方が勝利する。なぜ少数で多数を撃破する戦いが有名になるかと言えば、希だし、印象に残るからであろう。チームスポーツの世界では、その希なことを優秀な監督として礼賛し、何でもかんでも監督に責任を押し付け、戦力を金をかけて整備しないフロントの逃げ場にしているのだ。
会社の成功は、経営資源をいかに投下できたかで決まる。そして、スタッフに対して、ほぼ説明すれば、売れる商品やサービスを会社が準備し、それを買いたがる顧客を営業先にあてがう必要がある。それが戦場や戦況に関する正確な情報である。片っ端から、迷惑なアポ電をかけているようでは、非効率極まりない。それは、会社側が営業スタッフに戦場や戦況に関する正確な情報を与えていないからである。自分で情報収集しろというのは、経営陣の職務怠慢というべきだろう。それで迷惑を蒙っているのは、アポ電を意味不明に受けざるを得ない会社なのだが。まあ、アポ電をかけてくる時点で、うちの商品は魅力がないので、押し売りに行かなければ売れません、と自白しているようなものだ。
会社がやるべきは、ビジネスモデルの段階で最善を尽くすことだ。単純に言えば、売りやすい商品を売りやすい方法で売る。これを会社側で完ぺきにしておくことだ。そんなことできないから、優秀な営業を雇って、こき使う、と考えているようだが、戦略レベルでの怠慢を戦術レベルで補おうとする愚策にすぎない。
戦略レベルでは奇跡も偶然もない。経営者が血尿が出るくらいに考え抜くことだ。それを行わないから、従業員の肺に穴が開いただの、血尿が出る。松下幸之助先生も「小便に血が混じって赤くなる。そこまで苦しんで初めてどうすべきかという途が開けてくる」と言っている。また、カップラーメンの発明者安藤百福先生も「考えて、考えて、考えぬけ。私が考え抜いたときには血尿が出る」と言っている。
血尿を出せばいいというものではないが、経営者はそれぐらいの覚悟が必要である。
(教訓)
〇小よく大を制すは、珍しいから印象に残るだけ。ビジネスは経営資源をいかに投下できたかで成功するかどうかが決まる。
〇経営者はビジネスモデルを血尿が出るくらいに考え抜け。従業員に血尿を出させるのは、経営者の無能をさらけ出すようなものだ。