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起業家が目指すべき境地とは

宮本武蔵に学ぶ、

「空とは決まった形がないということ、形を知ることができないものを空とみるのである。もちろん空とは何もないことである。ものがあるところを知ってはじめて、ないところを知ることができる。」

「武士は、兵法の道を確実に会得し、その他色々な武芸を身につけ、武士として行わなければならない道についても心得ぬところがなく、迷いがなく、日々刻々に怠ることなく、心と意の二つの心を磨き、観と見の二つの目を研ぎ澄ませ、少しもくもりなく、一切の迷いの雲が晴れ渡った状態こそ、正しい空であるということができる。」

「この道理をわきまえて、まっすぐなところに則り、正しい心を道として兵法の道を世に広め、正しく、明らかに大局を良くつかんで一切の迷いがなくなった空こそが兵法の究極であり、兵法の道を朝鍛夕錬することによって空の境地に到達できるのである。」

「空というものには善のみがあって悪はない。兵法の知恵、兵法の道理、兵法の道が全て備わることにより、始めて一切の忘念を滅し去った空の境地に到達することができるのである。」

(解説)

五輪書にとって技術的には「構えがない」ことや、長い太刀、短い太刀のように特定の武器にこだわらないということが「空」であるともいえようが、メンタル的に「一切の迷いがないこと」が「空」なのである。

ビジネスにおいて、一切の迷いがない状態などということはあり得ない。新規事業をどうしようか、今の事業をこのまま続けていていいのだろうか。毎日はどうかはさておき、迷いの連続だ。それゆえ、ビジネスの場合、技術的な「空」が目指すべき目標となろう。

ビジネスにおける「空」とは、一切拘らずということだろう。商品やサービスのライフサイクルが短くなる中で、主力商品ですらも、他社へ売却することがあるかもしれない。もっとも連続起業家からすれば、自分の作ったビジネスをさっさと現金化してしまうのは、また「空」のなせる業と言えよう。自分が作った事業だからと言って、それにこだわる必要はない。

兵法の究極が、道理をわきまえ、正しい心を道として、大局を掴み、とあるが、これを表現すれば、ビジネスの成功法則をわきまえて、関係者全員が利益を享受し、マーケット全体の流れを掴み、コツコツと今の事業をやり続けること、その先に「空」が待っていると言えるのだろう。

善のみがあって悪はない。会社という箱の中で、誰かが儲けすぎていない、関係者全員がWin-Winになっていてバランスがとれた状態、これこそが「空」のような究極の状態と言える。普通は、役員がもらいすぎとか、顧客にサービスしすぎ、逆にぼり過ぎ、従業員がサービス残業に耐えている等、とても、「空」の状態が程遠い企業がほとんどなのだろうが。

いずれにしても、「空」の状態を作り出すのが起業家(経営者)の役割と言える。守銭奴にはできない。

[教訓]

〇戦略には何もこだわるな。柔軟性を持て。

〇関係者全員が利益を享受し、誰かが儲けすぎず、そういった環境こそが、ビジネスにおける究極の「空」の状態である。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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