織田信長に学ぶ、
信長は身内の者を同行させ、山中の高山、二の宮山に登り、「この山に築城しよう。皆ここへ家を移せ」と命令した。部下は「この山中に引っ越せとは難儀なことだ」と迷惑がった。
その後で信長は小牧山に移ろうと言い出した。小牧山へは山麓まで川が続き、家財道具を運ぶのに便利な土地である。皆喜び、移転を決めた。
ここも最初から言い出したら、ここへ移転することを迷惑がったであろう。
(解説)
小牧山は濃尾平野のはずれにある標高86メートルの小高い丘陵である。ここは、美濃攻略のための城としての位置づけであった。この後、美濃攻略を当方から進めることになる。そして続けて犬山城、鵜沼長、猿啄城、堂洞城を攻め落とした。
それだから小牧山に城を作ることは、戦略上の意義があったが、その意義をわざわざ部下に知らせていては、それが漏れて、周囲の城に計画される恐れがある。そのため城を作る本当の目的は明かせない。ただ移るから移るとしか言いようがない。
以上は、部下を動かすときのコツを述べている。最初は最悪な条件を提示しておく。これはひどい、とてもではないという気持ちを持たせる。上の例で行けば、引っ越しが困難である場所である。そして次に、信長は小牧山にしようと言い出す。この小牧山は家財道具を運びやすい。そのため、みんな喜んで移転した。移転は個人的にはものすごく負担になるから、最初から小牧山というといやいやながらであったろうし、信長への求心力は下がる。
ここで働き方改革の話は横において置き、部下にこの土日も働いてくれとお願いする。大抵は嫌な顔をする。プライベートの予定は飛ばさなければいけないし、そもそも土日も仕事なんて疲れるし、とんでもない。代休だっていつとれるかわからない。しかし翌日に実は土曜日一日だけで良くなったよ、と言う話をすれば、日曜日休めるのであれば喜んで、となる。毎回使える手ではないが、効果はあるだろう。
別に部下だけに使える方法ではない。お客さまにも使える。最初定価は1万円ですがと伝える。少し高いなと思わせておいて、今回はお客さまだけの特別価格8千円です、と言えば安いな、よし買いだとなったりする。
最初は悪条件を提示すれば、そのあと少しだけ良い条件となると反応率は上がる。これが最初から、8千円ですと伝えていたら、反応率は上がらない。
[教訓]
〇最初は悪条件を提示すれば、次が良い条件ならば飲む。