織田信長に学ぶ、
織田信長は大バカ者と言う輩がいて、道三は真偽を見極めるために、面会を申し出た。道三は町はずれの小屋に隠れて、信長の行列を覗き込んだ。
通りかかったときの信長の出で立ちは、髪は茶筅髷を萌黄色の平打ち紐で巻立てて、湯帷子を袖脱ぎにし、金銀飾りの太刀・脇差し二つとも長い柄を藁縄で巻き、太い麻縄を腕輪にし、腰のまわりには猿回しのように火打ち袋、瓢箪7つ8つほどをぶら下げ、虎皮と豹皮を四色に染め分けた半袴を履いた。
宿舎の寺に着いたところで、生まれて初めて髪を折り曲げに結い、いつ染めておいたか知る人もない褐色の長袴を履き、拵えておいた小刀を刺した。
道三との会談後、道三が帰るのを信長は二十町ほど見送った。途中猪子高就が道三に「どう見ても信長殿は阿呆でございますな」と言った。道三は「だから無念だ。この道三の息子どもが、必ずあの阿呆の門前に馬をつなぐことになろう」と言った。これ以後、道三の前で信長をバカ者呼ばわりする人はいなくなった。
(解説)
見た目は確かに馬鹿っぽいのだが、とにかく人と同じことはしたくない性格だったのだろう。こういう人物は、社会から鼻つまみ者にされるか、革命児となる。その結果も両極端だ。あるいは子供のうちにはやんちゃしていても、社会と言う買い主からいいように餌付けされ、社会にあうように矯正される。いつのまにか単なる凡人になり下がる。
しかし本物は、それなりの人物に会うときには背筋を伸ばす。信長としては斎藤道三とは組んでおいてよい相手と思ったに違いない。日本を統一しようという人物だけに、四方八方敵だらけだ。味方は少しでも欲しいところだろう。そんなところでいつもの通り、人と違ったことしかしたくないといって礼儀を失することがあってはならない。
斎藤道三と会ったときには、それ相応の出で立ちにきちんと着替えている。道三いわく「門前に馬をつなぐ」というのは部下になるということだ。実績のある道三に言われてしまっては、その部下は、何も言い返すことができなくなる。
また、信長の正室(濃姫)は斎藤道三の娘であり、政略結婚をしている。まさに能ある鷹は爪を隠すということだ。普段は大したことない人間を装っておけばよい。さらに、凄い奴は凄い奴を見抜いている。逆に凡人は凄い奴を見抜く能力がない。だから目の前の人があなたを評価していなければ、凄くない奴だと思うことにせよ。
[教訓]
〇まさに、能ある鷹は爪を隠す。
〇凄い奴は凄い奴を必ず見抜く。見抜いていなければ、見抜かない奴は凄い奴じゃないと思うことにせよ。