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強権病を発症させてはならぬ

(韓信は)「大王はご自分で勇にはやり仁に強い点で、高王とどちらが勝っていると、お考えになりますか。」
漢王は、しばらく黙然としていたが、「項王には及ばない」と答えた。すると信は再拝し、祝福していった。
「私もやはり大王が及ばないと思っております。・・・項王が土器を含んで叱咤するときは、千人がひれ伏すほど激しいものです。しかし賢将を信じて事を任すことができないので、それもいわば匹夫の勇にすぎません。・・・人を使って功労があり、封爵を賜う者にも、印を授けるのを惜しみ、印をもてあそんで摩滅するまで躊躇します。これはいわゆる「婦人の仁」であります。
さらに、項王は天下に覇を唱え、諸侯を臣事させていますものの、関中におらないで彭城に都しています。また、義帝との約束に背き、諸侯を王とするのに私情を挟んで公平ではありません。・・・天下の者は多く恨み、人民は親しまず、ただ威力に脅かされているにすぎません。だから覇者の名はありますが、実は天下の人心を失っているのです。それゆえ、その強さは弱まりやすいと申さねばなりません。
今、大王にはこのやり方と全く反対に、天下武勇の士を任ぜられるなら、何を誅殺できない敵がありましょう。
・・・秦の民で恨まぬものはありません。だから、いま大王が大挙東征されたら、三秦の地は檄文を伝えるだけで平定しましょう。

(解説)
劉邦と項羽で最終的に中華統一をできたのは劉邦であったが、その理由がここに現れている。まず優秀な人物は、反省ができるという点、自分のことを客観的に見つめることができる。叶わない奴がこの世にいることを知っている、つまり自分のことが劣っていることを知っていることだ。

人間神様でもないんだし、完璧な人などいない。その中で、自分の弱点さえ知っていれば、その弱点を補強すればよくなる。常に自分が正しいと思い込んでいると、その弱点を補強しようともしなくなる。その弱点補強が賢将を信じて事を任すということだ。自分一人の力では限界がある。そこで組織は会社の社長をトップとして、色々な人に任せることで成り立っている。一々相手を疑って任せなければ、組織にする意味もないし、自分ができる範囲でしか会社は回らなくなる。

そして任せるからには、それに伴う報償をケチってはならない。ケチなリーダーには誰もついて行かなくなる。少し大げさなくらいに気前がいい方だ、気持ちよくついて行くものだ。

また、評価も私情を入れず公正にしなければならない。あいつだけいつもいい思いをして、と思われるような評価をしていれば、他の者のやる気がなくなる。

さらに経営者だから好き勝手にして、強権ばかり発動していると、これもまた人がついてこなくなる。いわゆる人身を失っている状況だ。

[教訓]
〇自分の弱点を知っているものは強い。
〇素直に人を頼れ。そして頼った人を信じよ。
〇評価を構成にせよ。
〇強権病を発症するな。組織が壊れる。人心を失う。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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