勢いを出すために必要なこととは

それ軍は勢を用うるに成り、謀漏るるに敗れ、遠輸に饑え、井を躬躬するに渇し、煩擾に労し、安静に佚し、戦わざるに疑い、利を見るに惑い、刑罰に退き、賞賜に進み、逼らるるに弱く、勢を用うるに彊く、囲まるるに困しみ、先に至るに懼れ、夜呼ばわるに驚き、闇昧に乱れ、道を失うに迷い、絶地に窮し、暴卒に失い、予め計るに得る。故に旌旗を立ててもってその目に視せ、金鼓を撃ちてもってその耳に鳴らし、斧鉞を設けてもってその心を斉くし、教令を陳べてもってその道を同じくし、賞賜を興こしてもってその功を勧め、紂伐を行いてもってその偽りを防ぐ、昼戦はあい聞こえず、旌旗これがために挙ぐ。夜戦はあい見ず、火鼓これがために起こす。教令従わざるあり、斧鉞これがために使う。

（現代語訳）
軍事行動に関して以下の点に注意すべきである。
(1) 勢いに乗れば勝つ。
(2) 作戦計画が敵に知られれば敗れる。
(3) 輜重が遠距離になれば、食料不足が生じる。
(4) 乾地に陣すれば水不足に陥る。
(5) 敵にかき乱されれば披露する。
(6) 平穏すぎると緊張感が緩む。
(7) 戦いがないと疑いが生じる。
(8) 利を見ると惑いが生じる。
(9) 刑罰を厳しくすると消極的になる。
(10) 賞賜を約束すると積極的になる。
(11) 押されぎみになると弱腰になる。
(12) 勢いに乗ると強気になる。
(13) 包囲されると不安になる。
(14) 先頭に立つと恐ろしさが先に立つ。
(15) 夜大声を上げると軍中を驚かす。
(16) 闇夜にはとかく混乱が生じやすい。
(17) 道に迷うと作戦に支障をきたす。
(18) 追いつめられると身動きが取れない。
(19) 長期遠征は敗戦を招く原因となる。
(20) 事前の作戦計画は大きな支えになる。
そのため、旌旗を掲げて見せ、金鼓を打ち鳴らして耳に聞かせよ。斧鉞をもって心を一つに整え、教令を布告し同じ目的に進ませよ。賞賜を約束して功を奨励し、誅罰を科して罪をただすのである。日中の戦いは目が効くので旌旗を用い、夜戦では目が効かないので、火と太鼓を使って合図する。教令に従わない不心得者が出たときは斧鉞をもってこれを処断せよ。

（解説）
スポーツの試合で、自分たちよりも強いチームに勝つということがある。よく勢いが出たと言われるが、ビジネスにおいても勢いは大切である。

勢いに乗ることで無理と思っていた商談が成立する、次から次へと顧客から契約が取れると言ったことがある。当然、自分のスキルアップが必要なのだが、勢いは実力以上の結果を招く。勢いの正体とは「自信」である。

勢いは、まずは小さな目標設定から始めよう。大きな設定をしてしまうとそれが達成できず、途中でやめてしまう。小さな目標が達成すると自信がついて、もっと次の目標を求める気持ちが生まれる。小さな目標を次々と達成することで、さらに自信が付き、自信が付くことで実力以上の力を発揮する。それは勢いがあるからだ。そうこうしているうちに目標がだんだん高くなっていき、自分のスキルアップにもつながっていく。

目標を大きく立てると達成できずに自信を失っていく、そうすると後退してしまう。自己肯定感もなくなり、段々逆スパイラルに入っていってしまう。自分たちにできる、背伸びすれば手に届くところに目標設定をし、短期間で達成させ、次なる目標設定を置く。これが勢いを増すコツである。

当然、実力以上の事は続かないから、どこかでミスや失敗を侵すこともある。そういうときこそ、一度リラックスをする、目標設定を背伸びから維持に切り替えると良い。勢いに乗っているときには実力以上の力を発揮しているから、メンタルやフィジカルで疲れがたまっていることがある。それがミスや失敗の証拠でもある。後は注意力が散漫になるということも原因かもしれない。当然、ミスの原因を見つけ対策を立て、ミスを起こさないようにすれば、それもまたスキルアップにつながる行動である。

[教訓]
〇勢いは自分の実力以上の力を発揮する。その正体は「自信」にある。
〇小さな目標設定をしてそれをクリアして自信をつける。次にその目標をより高めていく。その繰り返しが勢いをつけ、さらには自分のスキルアップにつながる。
〇実力以上の事でミスや失敗を侵すこともあるが、リフレッシュや反省をして、また勢いを取り戻せ。