「最初に確認しておきたいことがある」・・・
「は、閣下、何事でございましょう」
「卿は自治領主ルビンスキーの全権代理か、それとも単なる使い走りか?」
ボルテックは美貌の帝国宰相をつつまし気な表情で見やったが、その眼からは観察と打算の光が漏れていた。
「どうなのだ」
「・・・形としては、むろん後者でございます、閣下」・・・
ラインハルトは薄い笑いを端麗な君の端にひらめかせ、何気なさそうに最初の一撃を打ち込んだ。
「フェザーンは何を望んでいる?」
(解説)
通常、日本の場合は、名刺を受け取り、そこに役職が書いてあるから、どんな権限を持っているか想像がつく。そして、普通お目にかかるのは、単なる使い走りがほとんどである。
早い話、営業にとっては、結構無駄な時間になることが多い。つまり目の前では話しているのが意思決定権者ではないのだ。大抵お持ち帰りになり、社内で検討した結果、却下となる。その理由は二つある。まず前提条件として、非常に魅力的な商品やサービスであり、その会社にとってそれなりに必要なものと仮定した場合、そもそも最初から断ることを前提としているため、意思決定権者には会わせない。そして、その商品やサービスを使い走りが上にきちんと説明できないということだ。
それを回避する方法としては、会社にとってメリットがある他、その使い走りにもメリットを持たせればいい。そのメリットについては、それぞれ考えろ。その使い走りの性格にもよる。
また、営業をしていて、ニーズを客から聞いてしまうのもよい。接点を持てたということは、何かに関心があることだし、向こうの潜在的なニーズを聞けば、こちらが提供するものも明確になる。会社によっては、提供しているサービスの中から適切なものを提示できるかもしれないし、場合によってはカスタマイズが可能かもしれない。今回は提供できなくても、今後の商品やサービス開発の参考になるかもしれない。営業活動をマーケティング活動の一環として考えても良いだろう。
スカ会社は、営業成績だけでその営業の成果を問おうとするが、成果だけでは測れないモノだってある。その無形のものを評価できてこそ、立派な会社になれるのだ。
(教訓)
〇客にニーズを聞いてしまえ。手っ取り早い。
〇客からニーズをヒアリングすれば、商品開発のネタになるかもしれない。営業の訪問を無駄にしないためにも、金銭的成果だけで評価するのはやめろ。