聖書に以下の事を学ぶ。
エリコのさらに北西部にアイという都市があった。第1回目の攻撃ではヨシュアの軍が敗走している。その原因を神様に問うと、ささげるべきものの戦利品を一部ちょろまかした奴(兵士)がいるという。その犯人の名前はアカンという者であったが、本人とその一族は石打ちの形で死罪となる。それだけ神との契約(律法)は絶対だった。
一度敗走していることが、敵にとっては油断となったのかもしれない。第2回目の攻撃では、ヨシュアである将が囮となって、敵の主力群をひきつけ、意図的に自軍を敗走させる。将を射るチャンスであると、敵の主力群は追撃してくる。そうして、都市が手薄になったところで、予め配していた伏兵が、都市を占領。その都市に火を放ち、都市から煙が立ち上がった。敵の主力群は帰る場所を失い、都市を占領したヨシュアの伏兵と、ヨシュアの主力群が、敵の主力群を挟み撃ちにして、大勝利を収めた。
これを現代流の営業の交渉事としてとらえると、こちらの目的は契約を勝ち取ること(アイの占領)にあり、その際に、こちらが攻め込まれても良い領域を予め設定しておくことだ。それは、交渉の相手方にとって、敵の将を射たと同じくらいのインパクトである必要がある。引くところはあえて引く(意図的な退却)のである。そして契約を勝ち取るときに、戻る場所、つまり契約を締結しないという選択肢を奪ってしまうことが必要だ。営業や交渉事があまり得意でなさそうに思わせるのも、実は効果的だ。いわゆる敵の油断を生むことになる。営業や交渉事が得意そうに思われると、購入する気が元からなければ、最初から相手が拒絶モードに入ってしまうこともある。心理的にブロックされたら、その壁を取り払うことは容易ではない。説得してどうなるものでもない。
こちらが攻め込まれてもいい領域とは、価格面であったりする。現場のことは現場に任せることも必要であるため、以前の会社では営業マンがここまでならば価格を下げてもいいという下限を教えてもらっていた。それを下回った場合には、一度交渉を打ち切り、会社へ持ち帰ることになる。価格面以外にも会社側のサービスという負担を増やすという方法もあるであろう。サービスを増やすわけだから、実質的な値下げであるのだが、いずれにしても、相手にメリットを与えることが、何よりも敵の将を射たと同じくらいのインパクトと交渉相手に与えることと言える。
もう一つ、別の例で考えてみよう。例えば、飲食店のサブスクリプションサービスでは、来店すれば代金が取れるという、こちら側の将を敵の目の前にさらす。同じだけ来店してくれれば、それだけ代金が取れる、そのメリットをこちらが捨て去るのだ。ただ、お客としては来店ごとに代金を支払っていれば、それだけ店にお金を払う行動になるため、来店回数は落ちてしまう。
そこで何度食べても飲んでも一定の金額しか頂きませんよといって、相手の気持ちを前のめりさせる(攻め入らせる)。そして月額いくらのサブスクリプション契約を申し込ませる。結果としてはこちら側の契約を取るという目的は達成できる。最終的には本当に得をするかどうかは、わからない。月額の価格設定と、平均来店頻度のバランスが適正であれば上手くいくだろうし、店側の負担が大きければ上手くいかないということになる。このバランスが上手く取れなかった店は、本当に自らの将の首を渡してしまうことになりかねない。
[教訓]
〇交渉事においては、相手を攻め込ませてもいいレベルを設定せよ。
〇自将の首をさらし、あえて全力で攻め込ませて油断させよ。最後に勝てばそれでいい。