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柔軟性を欠く人物も中間管理職には必要な場合もある

ヤンの見るところムライには独創的な才能は欠けているようであったが、処理能力に富み、また判断力も確かであるように思われた。不愛想で口やかましいところはあるが、陰湿さは感じられない。・・・

ヤンとパトリチェフの話を聞き終えると、質問に転じて、適格に要点をついてくる。ヤンが秘密監察官等ではないことはあっさり判明して、この件に関しては二人は散々油を搾られたが、それ以外の点ではムライは二人の証言をきちんと聞いてくれた。

「私がエコニアにくるまで、何もしていないと思われるのは心外ですな。最低限、必要と認められたことは確認しております。・・・」
・・・
ムライ中佐はエコニア到着以前に、事態の根幹を抑えてしまい。到着以後は、傍証を固めることに専念したのだろう。なかなかに、よくできる人物らしい。

「おみごとでした」
コステア大佐が連行された後、ヤンは率直にムライを称賛した。
「私は万事、型通りの考えしかできない男でね。型は提供するが、柔軟に修正を施すのは、他人に任せたいと思っている」

(解説)
ムライは創造性に欠くというが、事件の真相を調査するために必要な行動を立てられるだけの頭はある。適材適所として、このように公平を期すべき必要のある部署においては、柔軟性は欠くながらも、処理能力と判断能力に優れた人物は不可欠である。公金横領ということであれば、どこかに隠し口座がある、というのは、独創的発想ではなくて、過去の事件の進め方というマニュアルには書いてあることと思われる。ときに複雑怪奇な事件の解明のためには想像力を働かせる必要はあるだろうが、想像(Imagine)は良いが、創造(create)は害悪であろう。たまに調書を創造される小説家もいらっしゃると聞く。そのためたまに冤罪は起きるわけだが。

咄嗟のついた嘘を見破ることは大切だが、嘘をついたからと言って、全部疑ってはならない。感情的にならずに、事実だけを聞き分ける能力を持つべきだ。

ムライ自身も「型通りの考えしかできない。柔軟に修正を施すのは他人に任せたい」と自覚している。人はそれぞれ、当たり前のことを当たり前のように淡々とできる人間というのも一つの才能である。

(教訓)
〇創造性はないのものの、想像性くらいはあって、淡々と仕事ができる人間も組織には必要である。
〇咄嗟の嘘を見破ること、しかし嘘をつかれたからと言って感情的にならず、事実とそうでない点を見分ける能力はリーダーにも必要である。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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