インゴルシュタットの状況判断と作戦指導は、用兵学の上でも完璧なものであった。但し、実践的には何ら有益な結果を生まなかった。地理に関する情報が不十分で、それぞれが孤立した状態にある大兵力を運用するには、精密に過ぎ、かえって不適切だったのだ。指令は敏速に発せられたが、伝達に時間がかかり、帝国軍の各部隊が一確認に苦労しながら予定戦闘中域に達したときには、そこにはすでに敵の姿はなく、困惑しているところへ新たな指令が届き、動き始めると別の指令がもたらされる。こうして、帝国軍は敵の現在位置も判明しないまま、ダゴン星域周辺部を右往左往することになった。
(解説)
通信インフラがしっかりしていても、伝達に時間がかかるようでは意味がない。その伝達には、正確な情報を伝え、尚且つ受け取る方が正確に情報を受けとることまでが重要である。正確なだけでも駄目だ。タイムリーでないとならない。
大組織になればなるほど、情報の収集だけでも時間がかかる。現場のレベルに合わせていると、その情報収集に手間がかかる。むしろ情報収集のスピードを経営陣の意思決定のスピードに合わせる必要がある。例えば4月の売上や利益に関する情報を翌月に入手して、仮にだが、5月末の経営会議あるいは取締役会で議論するとしよう。そうなると実際に現場レベルで改善して行動をとるのが6月になってしまう。4月のときの問題が6月になって改善されているようでは、遅すぎる。しかも4月のときの起きた問題が6月に起きるであろう問題と同じであるとは限らない。別の問題が生じているかもしれない。
会社の都合もあるが、まず情報の収集で現場レベルの都合を優先させるわけにはいかない。営業の成績は月次で締めるから末日までは各営業は忙しくて当然だ。情報は限りなく正確であればよく、100%正確にと考えていたのでは情報収集のスピードに問題が生じる。不正確すぎは良くないが、多少の誤差は許容すべきである。
上場企業においては、あれだけ大所帯でも翌月3日までに全ての情報を収集するだけでなく月次の仮決算まで行い、取締役会ではなく、5日、おそくても10日の経営会議において、議論するところも少なくない。そのときには、営業部レベルでは、問題点の抽出と検証、改善プランまで議論され、会議で討議される。このスピード感が大切である。
大企業には優秀な人材が多いが、中小企業は小さいのであるから、もっとスピードで勝負しなければ、どんなに頑張っても勝ちようがない。
(教訓)
〇情報伝達は正確かつスピーディーに。
〇情報収集は現場の都合など聞くな。経営会議のスケジュール感に合わせろ。
〇中小企業こそ、スピードで勝負せよ。