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直接法ではなく間接法を用いて目標を達成せよ

一人の平民の老婦人が憲兵隊にとらわれた。皇帝の肖像画を壁から取り外し、足蹴にして叫んだのである。
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エルリッヒ・ケスラー中佐は・・・老婦人を密告した男の途へ自ら出向いて、手柄顔の密告者を逮捕してしまったのである。
「老婦人が不敬の大罪を犯す場面を目撃しながら、それを制しせず手をつかねて傍観していたとは、臣民の道にもとる。後になって手柄顔で密告等しても、それは自分の罪を隠そうとの意図によるもの。内心で老婦人に同調していたからこそ、陛下の肖像画が踏みつけられるのを傍観していたのであろう。共犯に類する行為である。これを処罰せずして、不敬罪の法の精神を守ることはできない」
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「恐れ多くも陛下の肖像画を踏みつけるなど、正気の人間の行動ではありません。狂人に拷問を加えても無意味であります」
ケスラーの反抗もそこまでではあった。・・・
「なるほど、あのような反抗の仕方もあるのだな、見習うとしようか」
本来、ラインハルトは行動においても表現においても直線的であることを好んだが、ケスラー中佐の主張を見て、頷くところがあった。

(解説)
皇帝の肖像画を足蹴にする行為は、帝国においては罪である。しかしそれにムカついていたとしても、表立って反論はできない。ケスラーは自らの想いを達成するために、老婦人を助け、密告者を罰したかった。そこで、老婦人は気違いだった、密告者はそれに見てみぬふりをしたから同罪だ、という理論づけを施したわけだ。結果、ケスラーの想いのままになり、留飲を下げた。回りくどいやり方だが、このような反抗の仕方もあると、ラインハルトを感心させた。

物事を達成させるために、直接法でなく、間接法という考え方を用いる。例えば、不動産を売りつける方法として、相続税対策という切り口がある。現金で持つよりも不動産で持った方が、税額が割り引かれるためである。はっきり言って、ほとんどが相続税対策にはなっていない。単に不動産屋が儲けるためだけの詭弁だ。しかし、彼らは直接、不動産を販売せずとも、間接的に相続税対策という名目で、彼らの目的は達成している。このようなことは、ビジネスにおいて数多くあるものだ。売りたいものを端に買って下さいでは、誰も買わない。間接的な手法を用いて売れ。

(教訓)
〇直接売れないものは、間接的な手法を用いて売れ。
〇直接批判できないことは、間接的に批判せよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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