アルフレッド・ローザスはアッシュビーのように雄大なほどの偉才には恵まれなかったが、幕僚たちの意見を巧みに調整し、強烈な個性のぶつかり合いに緩衝役を果たし、優れた組織力と課題処理能力によって、アッシュビーの司令部を統一的に運営することができた。それぞれに異なったタイプの才能が、集団として機能するには、生きた接着剤が必要なのであり、ローザスは、指揮官として単独行動したときには、「平凡よりややまし」という程度の成績を上げただけであるが、アッシュビーの司令部にあっては、全体の力量を強化し、発揮する上で、比類ない功績をあげたのである。
(解説)
こころの知能指数を提唱したダニエル・ゴールマンは、リーダーシップの形を以下の6つに分類している。簡単に以下、解説する。
(a) ビジョン型
ビジョンを設定し、それに向けて部下を動かしてゆく。部下の自主性に任せ、達成に向けての行動は強制しない。
(b) コーチ型
コーチングによって部下の能力を引き出す。スポーツなどのコーチと同じようなもので、コミュニケーションで部下の希望を叶え、組織の目標達成に結びつける。ここでも部下にやり方を押し付けることはしない。
(c) 仲良し型
メンバー同士の良好な関係を重視して、個人の気持ちを尊重する。目的達成に向けて人間関係を改善する。
(d) 調整型
メンバーの意見を尊重して、民主的な方法で目標達成を目指す。チームワークを重視する。
(e) ペースセッター型
リーダーが模範となって、部下に同様の行動と能力を求める。リーダーが先導してハードワークに努める。
(f) 強制型
部下に対して命令に従わせる。カリスマ型。
リーダーだからと言って、何でもかんでも俺についてこい、これのいうことを聞け!でなくていい。その人に相応しいリーダーとしての形があるし、その組織に相応しいリーダーの形がある。
ローザスは調整型リーダーと言ったところだ。優秀な部下たちの緩衝材となり、組織の接着剤としてのマネジメントを心がけていたということであろう。
(教訓)
〇リーダーシップには「ビジョン型」「コーチ型」「仲良し型」「調整型」「ペースセッター型」「強制型」と6つの形がある。
〇リーダーシップには色々な形があって、どれがベストというものはない。リーダーの性格に応じて、組織の性格に応じて、あるいは組織のステージにおいて、適切なリーダーの形は異なる。