・・だが、イゼルローン要塞の内部を、帝国軍の残兵がうろついているとあっては、異次元の恐怖を楽しんでもいられないだろう。
「ばかばかしい話だが、放ってもおけないだろうなあ。不安って奴は恐慌と猜疑の卵だからな」
・・・
幽霊とやらの目撃談が多発している場所を調査したらどうか、と言い出したのはシェーンコップ准将である。了承したヤン提督は、言い出しっぺのシェーンコップ准将が調査の指揮を執るものと思っていた。ところがシェーンコップ准将は笑い飛ばして曰く、
「冗談じゃありません。自分で指揮をとらなくてはならないのなら、こんなあほらしいことを提案したりしませんよ。物好きのお調子者がいくらでもいるでしょう」
(解説)
企業において、不安系の噂と言えば、従業員のリストラ、企業の買収、経営陣の交代の可能性等についての恐れを言葉で表現したものだ。人はある情報の真実性を見極める場合、自らの価値観を高める方向に偏りやすい。例えば、残業続きでメンタル的に病み、会社に批判的な感情を持っていれば、会社が倒産する可能性の話を聞くと、倒産したら転職しなければならず、自分も被害を受けるにもかかわらず、それを信じてしまいがちになる。
しかも、自分が持っていた考えとは真逆な情報を提示されると、自分の考えをさらに信じてしまう。例えば、経営者が「リストラはしません」と断言したところで、「そうは言ってもどうせリストラするんだろう」と嫌疑的になる。
シェーンコップの言うように、不安は恐慌と猜疑の卵である。他の従業員のモチベーションを下げる方向に働いてしまうので、事前にその不安を取り除かなければならない。財務上の不安があるならば、資金繰りに不安がないというメッセージを強く送らなければならない。当然、何らかの支払遅延が起こってはならないことは言うまでもない。
さて、もう一つ。言い出しっぺがそのプロジェクトのリーダーシップを取るべきか否かについてだが、その通りだろう。そうすると、自分の仕事の負担が増えるから、指摘しなくなる。だから、言い出しっぺがそのプロジェクトのリーダーを行うことについて、報奨金を出すと良い。言ったもの勝ちにする制度にしないといけない。もちろん、言い出しっぺがどうしてもやりたくない場合、別の者が言い出しっぺの代わりに、リーダーを行うことも良しとしよう。いずれにしても、仕事の負担が増えるのだから、報酬は与えるべきだ。それがタスクマネジメントというものだ。やって当たり前ではない。ましてや不安除去のプロジェクトであればなおさらである。
(教訓)
〇不安は、従業員のモチベーションを下げるから、早めに消火活動を行え。
〇言い出しっぺがリーダーシップを取り、必ず言い出しっぺが得をする報酬制度を構築せよ。