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権限集中は組織にとってマイナスになる

「検察官は言われる。被告には帝国軍撤退の全責任がある、と。しかし被告は総司令官にあらず、一介の参謀である。検察官は言われる。被告は勝利のための作戦を立てなかった、と。しかし被告は参謀長にあらず、一介の参謀である。検察官は言われる。被告は補給物資を横流しして味方を害した、と。しかし被告は主計監にあらず、一介の参謀である。一介の参謀!高々一介の参謀が、遠征軍の総指揮、作戦、補給、通信の各分野にわたって最高度の権限を有するなどということがあり得ようか。ありえるとすれば、それは一個人に権限を集中させた組織それ自体の罪である。組織の罪でないとすれば、一個人の無法な跋扈を放任した各分野の責任者の罪である。被告の罪を責めるなら、同時に、彼らの罪も問われなければならぬ。・・・軍と法廷の真の威信を守るためにも、被告の無罪を要求する」

(解説)
帝国軍は大戦力をもってして、同盟に対して大敗を喫した。生還率は8.3%でしかなかったという。ヘルベルト大公は静観したものの、玉座は遠のいた。参謀たるインゴルシュタットは裁判にかけられた。このインゴルシュタットを被告とした裁判において、弁護人となったのがオズヴァルト・フォン・ミュンツァー中将で上記の言葉を残した。この裁判自体、皇族を守り、帝国軍の不名誉を一身に背負わせるための犠牲の羊にするだけのものであった。

創業一族の社長がへまをしたときに、その社長を解任するわけにはいかないから、創業一族とは関連のない副社長に全責任を押し付けて、解任するでよしとする、といったところである。創業一族の会社がみんな悪だとは言わないが、あり得ないわけでもない。上場企業でもない、ある経理部長を年収1,000~1,500万円で募集と、ある会社からお誘いを受けたことがあるが、経営陣はオーナー一族である。なんだか脱税をやっている匂いがして、その脱税の責任を経理部長のせいにするのでは、と思い、そのお誘いを断ったことがある。そもそもその後脱税事件で問題になっていないから、心配し過ぎだったかもしれない。しかし、(自分は君子でないが)危うきに近寄らず、というスタンスは守りたい。

この弁護人、正論を吐いているわけだが、仮にインゴルシュタットが悪人であるとした場合、その一個人に権限を集中させる組織の方が問題であるし、これを任命した責任もあるだろう。殿ご乱心の場合もあるし、経営者であっても一人に対する権限集中は組織にとって必ずしもプラスに働かない。

やめさせればいいというわけでもない。罪を憎んで人を憎まず。これは組織においても重要な原則と言える。

(教訓)
〇権限集中は組織にとってマイナス。
〇権限を集中させたときには、その権限を牽制する仕組みを導入せよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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