兵士たちにしてみれば、好き好んで戦場に来たわけでもない以上、生きて故郷に帰るためには、上官に有能であってもらう必要があった。自分たちの生命を託さねばならず、その延長上に家族の幸せもかかっている。無能で無為に部下を死なせる上官など、敵よりよほど憎い存在であった。
(解説)
働きたいと思っている仕事をやっている人なんて、さてどれぐらいいるのだろう。そして自分が働きたいと思っている仕事に就くことができたものの、こんなはずじゃなかったという者も多いのではないだろうか。おそらく世の中の大半の人間は、今、この仕事に就けて良かったと思っている人間の方が圧倒的に少ないだろう。だいたい転職先だって、ベターを選んでいるだけで、ベストでもない。ていうか、これでしか雇ってもらえなかったから仕方なく働いているというのが本音だろう。
それ故、好き好んで仕事をしているわけではない以上、上司に有能であってもらわなければならないのだが、そのような確率も相当低い。大抵この人に合えてよかった、というよりも、なんでこんな上司なんだよ、とどちらかというと不平だらけなことが多いだろう。
理屈では1日8時間、実際はもっと多いし、通勤時間も入れると、成人してから引退するまでの人生の3分の1くらいが、仕事をしている。まさに生活を完全に会社に委ねている。そして、家族の稼ぎ手が誰かに関わらず、共働きも多いであろうし、自分の人生だけでなく、家族の幸せもかかっている。仕事が家族の幸せを破壊することもある。
仕事で上司にいびられ、家庭に帰ってきても安らがないでは、人生が針の筵のようなものだ。仕事のやりすぎで家庭生活に不和が起こることはあるが、仕事が充実している人は、比較的家庭でも円満なことが多い。仕事が充実していない人は、家庭が上手くいっていないことが多い。仕事が充実していないと、家庭で家族に当たってしまうこともあるだろうし、その発散を別の方面でしなければならないこともある。
上司が有能であるという確率は相当低く、無能や無為であることの方が確率は高い。そうであるならば、せめて、なるべく自分が「好き好んで」仕事ができる環境を見つける努力を惜しむべきではない。これからは年金も少なく、仕事無くして普通の生活は送れなくなる。人生の3分の1が仕事という可能性もある以上、人生の3分の1が「好き好まない」状況なのであれば、後は夢でも見て喜ぶしかない。まあ、そのような状況では、ぐっすり眠れないし、悪夢ばかりであろうが。
(教訓)
〇年金が少なく、ずっと働き続けなければならないため、死ぬまで毎日人生3分の1が仕事という可能性もある。だからその3分の1を充実させる努力をせよ。
〇仕事は人生の軸足である。仕事次第で、質の高い睡眠や、質の高い生活が送れるかどうかが決まる。
〇無能で無為に部下に負担をかける上司は、敵よりも憎い存在である、と部下から思われぬように努力しよう。