「ラインハルト様、お話があります・・・ヴェスターラントで200万人の住民が虐殺された件です」
「それがどうした?」・・・
「ラインハルト様が、その計画を知りながらも、政略的な理由で黙認した、と申すものがおります」
「・・・・・」
「事実ですか」
「・・・そうだ」・・・
「第一、キルヒアイス、この件に関して、俺がいつお前に意見を求めた?」・・・
「いえ、お求めになっていません」
「そうだろう。お前は俺が求めたときに意見を言えばいいんだ。すんだことだ、もう言うな」・・・
自分がどうすれよいのか、・・・キルヒアイスのところへ赴いて、自分の行為を謝罪し、「あんなことは一度きりだ、今後、絶対にしない」と言えばよいのである。・・・
キルヒアイスも、わかってくれてよさそうなものだ。その思いがラインハルトにはある。無意識の甘えであったろう。
(解説)
ヴェスターラント公の核兵器による大虐殺に見てみぬ振りをした。それが結果として、多くの人命を傷つけたとしても、さらに多くの人命を救うためには仕方がないと考える。これはリーダーにはやむを得ない選択であるときもある。全ての人は救えないのである。我々一般人からすれば、全員救ってほしいとは思うもの、しかも自分自身が、あるいは身近な者が犠牲になるのは耐えられない。しかしそれでは何もできないこと多い。結局のところ、社会なり組織なりは大なり小なり犠牲が伴うもの、と考えるのが現実である。
最大多数の最大幸福というと、聞こえがいいが、それは最小人数の最小不幸という、コインの表裏の関係でしかない。確かに、理想は必要だ。しかし常に理想論で意思決定しては、全体不幸になる可能性もあるだろう。そのときに理想論を棄てられるかが、ナンバーワンというものである。ナンバーツーは意思決定の最終責任者でないがゆえに、理想論を語れる。そのような意見も取り入れて、最終的に責任を負うのがリーダーと言える。
(教訓)
〇ナンバーワンは、時には理想論を捨て去れ。但し、忘れてはならない。