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頭でっかちの人間に、意思決定が必要な仕事を任せるな

イゼルローン要塞は、時の皇帝オトフリート五世が、重臣セバスティアン・・フォン・リューデリッツ伯爵に命じて建設させたのだという。
この人は、前線の指揮官としては、「戦えば必ず負ける」と言われた人なのだそうだ。無能、と言うのとは少し違うらしい。きちんと計画を立て、理論に従って兵を動かすのに、「敵が理論通り動かず」負けてしまう。「叛乱軍の奴らは、用兵理論をわきまえない不届き者ぞろいだ」と怒っていたそうである。・・・
まあ、負けてばかりで重臣でいられるわけでもないので、軍事土木とか補給とか、理論通りにやれる仕事では功績を立てたらしい。

(解説)
世の中は全て理論で成り立っていると言わんがばかりな人間は少なくない。世の中には正解があって、必ずその正解にたどり着くと考える。なぜそうなってしまうかと言うと、子供のころから、教科書を勉強して、問題を解いて正解を導く、その正解の数が多ければ多いほど、素晴らしい人間だと言われる。加えて、採用する方が仕事もできる(可能性の高い)人間だと思っている節もある。もちろん事務処理能力と言う点に関してはそうかもしれない。

それ故、そのような人材は、理論通りに物事が動いていないと、それで思考も行動もスタックしてしまう。自分がわからないことに出会えば、自分で調査することもせず(する人もいるが)、自分はどうすべきかを誰かに尋ねるのだが、聞かれた方も困ってしまう。自分で考えてくれ、と言うのが本音である。自分がどうしたいか、そうすればいいだけの話だ。

いつのまにか、マニュアルに書いてあることをそのまま実行するだけの人材が、教育によって量産されていく。マニュアルを作る方と、マニュアルを使う方に完全に二極化していく。

マニュアルは、属人性を低減、一定の品質を担保、そして作業の効率化に資するという意味では大きなメリットがある。当然ある程度規模の企業であれば必須である。しかしそのメリットを消してしまうくらいにデメリットがあるのも、マニュアルなのである。一定の品質が保たれても、それ以上の付加価値を生もうともしなくなる。つまり、個人の創造性が発揮されない。

マニュアルは必要なのだが、同時に自主性を重んじ、必要最低限にやるべきことだけを明確にし、なるべく現場で創意工夫を出させる組織上の仕組みが必要なのではないだろうか。何でもかんでもマニュアルでは、働く方も面白くない。でも働く方がそれを望んでいるのかもしれない。それではロボットの方がましになってしまう日も遠くない。

(教訓)
〇マニュアルは、属人性を低減、一定の品質の確保、作業の効率化というメリットがある。
〇頭でっかちの人間には、考える力が乏しいから、意思決定を必要とする職務に就かせるな。
〇逆に言えば、それ以上の付加価値を生むことをしなくなってしまう。最低限にやるべきことだけ抑え、現場で創意工夫することを認める制度が不可欠と思われる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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