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歪んだレンズでモノを見るな

「どこへお出かけです。閣下?」
「知れたことだ。ロイエンタールに会う」
「いえ、なりません、閣下。このような事実が明らかとなった時期にロイエンタール元帥とお会いになっては、無用な疑惑を招くことになりましょう」
「賢しげに忠告するな。おれには1ミクロンの後ろ暗いところもない。陛下の廷臣同士、年来の友人同士が会って何が悪い。・・・」
「元帥閣下、バイエルライン提督の言う通りです。閣下が公明正大であられても、見る者のレンズがゆがんでいれば、映る像もおのずとゆがみます。ロイエンタール元帥の不名誉は嫌疑が晴れさえすれば、いつ閣下がお会いになられても、そしる者はおりますまい、ご自重ください」

(解説)
「ロイエンタール元帥に不穏の気配あり」という報告書が、司法尚書ブルックドルフから、帝国軍大本営にもたらされた。故リヒテンラーデ公爵の一族の女性を囲っていたことで、帝国内で波紋を呼んでいた。当然旧友でもあるミッターマイヤーはそれを黙って見ているわけにはいかず、ロイエンタールを問いただすためにも、直接本人に会いに行こうとするが、部下から止められた。

本人に、全く後ろ暗いことがなくても、それを見る者のレンズが歪んでいれば、映る像も自ずと歪む。会社等3名いれば派閥ができ、自分なぞは、派閥ができたときにはどちらの派閥に属するということもないが、派閥自体の連中は、どちらの派閥かが重要であって、そもそも別の派閥に属するというだけで、心を赦すということはないようだ。自分のスタンスは、どちらも等距離で接し、どちらの言い分も聞くという考え方である。それぞれの派閥にそれぞれの正義がある。ある日、ある派閥の人間に、お前はこちらのグループかと思っていたといわれ、まあ、あまりにもあほらしくて、その派閥争いから一抜けたするために、その組織を去ったことがある。会社には仕事をしに行っているので、派閥争いをしに行っているわけではない。概ね、派閥争いの忙しい会社は、対外的な争いに勝てるほどの力がない。

どんな人でも、完全に客観的に物事を見ることは難しい。それぞれの思想のフィルターで、見た物事を感じ取ろうとする。その結果、たった一つのことであっても、真逆の結論に達することがある。どうしてそのような噂が立ったのか、その原因は何だ。噂を立てた人物はこの噂によってどのようなメリットがあるのか、を考えていくと、真実と言うのが見えてくる。しかし、人間はそんな面倒くさいことはしない。自分のフィルターでしか物事を見ない。その結果何も考えずに、単に否定的にみるというだけになる。そして、永遠に物事の真実に到達することにはならないのである。派閥争いもなくなることはない。結局、真実よりも俺が好きか、あいつが好きかというくだらない議論と化するだけだ。

(教訓)
〇レンズが歪んでいれば、映る像も歪む。自分では歪まないレンズを身に着けよう。真実を知るレンズを持て。
〇派閥争いは、要するに俺が好きか、あいつが好きかという低次元の争いでしかない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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