「あいつらの装甲車を手に入れれば、俺たちの生きて還る道はずっと幅を広げるだろう。そう思わないか」
「ええ、何倍かになりますよ」
彼らにとって、最初の戦いは、武勲や野心を云々する以前に、生きるための戦いとして現れたのである。
(解説)
ラインハルトとキルヒアイスは、ヘルダー大佐の命令で、装甲車で情報収集のために調査を依頼された。しかし、その調査は本来の目的でなく、ラインハルトを事故死させるための策略であった。その装甲車のバッテリーを故意に古いものに換え、寒冷地で凍死あるいは餓死させようとしたのである。彼らが停泊していた場所に運よく同盟軍(敵軍)の装甲車がやってきたため、それを奪うことにした。
「最初の戦いは、武勲や野心を云々する以前に、生きるための戦いとして現れた」とあるが、起業間際もそんなものだろう。最初は夢に向かって驀進する予定だったのだが、ほとんどの確率で、うまくいくよりもスタートダッシュに失敗する。あるいはスタートダッシュこそうまくいくのだが、最初だけであとはじり貧になる。
そのうち、どうにもならないものだから、まずはどのように生き残るかを考えざるを得なくなる。崇高な理念の達成などではなく、生活費を稼ぐための仕事をしなければならなくなるのである。仕事の好き嫌いなんて言ってる余裕もない。
しかし、このような視点、つまりまずは生きるために稼ぐ、に立ったときにはじめて、活路を見出すことができるようになる。理想論を垂れているうちは、ビジネスなんて上手くいかないのだ。ビジネスとは現実論でしかないからだ。
理想論にこだわる経営者は少なくない。経営理念が素晴らしければ、支持者、それは顧客であったり、支援企業が勝手に寄ってくると思っているのだろうか。そんなきれいごとよりも、お金に拠ってくるのが現実なのだ。それ故、まずはお金を稼いでから、理想論を垂れるべきだ。理想論は放っておいてままで現実化したことはない。現実化した後で、その理想論に少しでも近づくだけである。
(教訓)
〇生きるために稼ぐことが起業のスタートラインである。
〇理想論は上手くいってから垂れろ。