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丸く収める仲裁の方法とは

「卿のお心情もわからないではないが、卿と軍務尚書が対立を続ければ、皇帝の宸襟を騒がせたてまつることになりますぞ。皇帝は、ご自身しばしば病臥され、皇妃のご出産も近いというこの時期です。臣下たる者、私情を慎むべきではありませんか」
ラインハルトの名をだされると、ビッテンフェルトも鼻白まざるをえなかった。
不機嫌そうに沈黙を続けた後、オレンジ色の髪の猛将は、組んでいた腕をほどいた。
「わかった。卿らにそう迷惑をかけるわけにもいかんだろうからな。要するに、皇帝の影に頭を下げると思えば腹も立たん。オーベルシュタインを人間だと思うから腹が立つのだ。卿もそう思うだろう?」

(解説)
監禁されたビッテンフェルトのところにミュラーがやってきて、諭した。ミュラーは中々にできた人間である。

腹を立てている人に対して、諭すためには、まず気持ちを理解しているということを伝えるべきである。そこでミュラーは「あなたの心情は分からないではない・・・」と言う言葉から始めている。

組織上、ナンバー2とナンバー3が口論をしていて、それにナンバー4が仲裁に入ると仮定しよう。次にやるべきことは、「喧嘩を続けていると、リーダーが困りますよ」と言ってみよう。しかもそのリーダーは、最近病気がちで、妻の出産が近く、というように、プライベートのことでいろいろ苦労していて、気苦労を増やすのもどうか、と言うのだ。ビジネスのことで頭がいっぱいと言うと、部下のことに気を使ってくれても、と思う気持ちも出てくる。ひたすら、リーダーのことをネタに使うからには、プライベートのことを絡めてみよう。これだけでもナンバー3の気持ちは落ち着くに違いない。

しかも、リーダーに迷惑をかけるわけにはいかないと思うものだ。リーダーに対する信頼度が高ければ。

ビッテンフェルトの納得の仕方もベターだ。それでもはやりオーベルシュタインには頭を下げたくない。あくまでもラインハルトの影に頭を下げる、あるいは人間だと思わずにモノに対して謝罪する、そう思えばむかつきも少なくなる。ビッテンフェルト自体も悪いと思っているわけじゃないのだから、自分が悪かったといって頭も下げづらい。

この考え方は、社長が部下の不祥事で、報道陣や被害者等に頭を下げなければならないときも応用が利く。目の前の報道陣や被害者をぬいぐるみだと思えばよい。自分自身は悪くないと思っているときに謝罪しなければその場が収まらないときに良い方法だ。

(教訓)
〇仲介するときに、怒っている人相手に話す場合、「あなたを理解している」と言う言葉を忘れるな。
〇謝罪するのは人と思うな。ぬいぐるみと思え。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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