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おまじないには効果があるのか

兵士たちの間をリスのような軽捷さですり抜けてきた人影がいる。ケスラーの傍もすり抜けようとしたが、憲兵総監が素早くうでをのばし、その襟首を捕まえた。彼の獲物は、17歳ぐらいの黒っぽい髪と瞳をした、繊細な顔立ちの少女だった。
「危ないではないか。下がっていなさい」
「でも、・・・皇妃さまと大皇妃さまが、まだ二階にいらっしゃるのです。話してください」
「近侍の者か」・・・

「ホクスポクス・フィジプス・ホクスポクス・フィジプス!」
奇妙な呪文を唱えつつ両手の指を組み合わせていた少女が、ケスラーの不思議そうな視線に気づいた。・・・
「祖父から教わった呪文なんです。兇事よ、消え失せろって意味だそうです」
「効果があるのかね」
「繰り返す回数が多いほど」
「では、続けていてくれ」

(解説)
地球教のテロリストが、アンネローゼとヒルダの住む館にテロを仕掛けてきた。そこの召使の少女が、ケスラーがテロリストと対するときに、館に入ろうとして、ケスラーから止められた。アンネローゼやヒルダが危機的な状況に陥り、少女は祖父から教えてもらった呪文を唱えた。ケスラーも付き合いがいい。作戦遂行の間、そのまま呪文を唱えさせた。それに、皇妃と大皇妃の命がかかっている。ケスラーも神頼みをしたくなるだろう。

呪文、いわゆるおまじない、そのものに効果があるわけではない。「アブダカダブラ」という手品ショーで用いられる呪文は、手品師にとってみれば観客の前で失敗しないようにと言う願掛けくらいの意味しかないだろう。手品師が手品を失敗しないためにはそれだけ練習を積んできているわけだし、呪文よりも練習の方がはるかに効果がある。元々、手品の前に、この呪文はお守りに刻印された際に治癒力を持つと信じられていた。

語源は定かではないが、アラム後で「私は言葉の如く物事を成せる」「この言葉のようにいなくなれ」、あるいはヘブライ語で「私が話しように物事が創造する」というもの。狙撃の腕があったケスラーですらも、絶体絶命の状況において、それを信じるのは、自分の腕だけである。そして確実に敵をしとめること。そのために最大の敵は、焦りや動揺、むしろ相手ではなく自分との戦いであったはずだ。自分が平常心を持つことが重要。そのために、おまじないがある、と思えば効果がある。

(教訓)
〇おまじないで自分の平常心を取り戻す事ができれば、おまじないに効果があるといえる。
〇おまじないよりも大切なことは、普段からの練習、訓練、心がけ、準備である。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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