「シュターデン教官は、知識は豊富でしたが、事実と理論が対立するときは理論を優先させる傾向がある人でした。私たち生徒は、理屈倒れのシュターデンと悪口を言っていたものです。」
生まれたときから無数の特権を教示し、障害の少ない人生をいわば他人の足で歩み、特権を有しない人々を見下して育ってきた彼らにとって、願望は努力なく実現されるべきものであった。勝ちたいと思えば勝つものなのだ。
(解説)
ラインハルトは、先陣をミッターマイヤーに任せた。その理由の一つは、賊軍のトップバッターが彼の教官だったからである。教官の癖を読んでいることを見込んだのであろう。
そして、シュターデンは先陣を切り、敵の士気をくじくはずであったが、本来、すぐに動いてくると思われるミッターマイヤーがなかなか動いてこないために、思考停止に陥り、部下に後押しされる形で動いてしまった。彼の理論では、ミッターマイヤーは疾風ウォルフの異名を持つ男であるから、すぐに動くはずだった。
部下の多くは貴族階級出身であり、今まで苦労することを知らなかった。欲しいものは何でも手に入った。そのため、勝ちたれば、勝ちが得られると思ったのだ。だから戦えば勝つのである。苦労をしていない人間は、苦労したことがないから、その苦労を知らない。
サラリーマン生活において、それなりの実績を上げてきた人は、独立をすれば、自分ならもっとうまくやれると思うのだが、現実は甘くはない。勤め人と、経営者は180度異なる。
自分が上司に指示されて行動をとっていれば、大抵の会社であれば、結果が出る。しかし、何のブランド力もなく、何のビジネスモデルもなく、そして優秀な部下が一人もいない環境で、前職と同じパフォーマンスが上がるということは100%ない。
店を出せば客が入るものではないのだ。理屈ではなく、今、目の前にある事実こそが現実である。それをどのように変えていくのか、それができる人間が、経営者と言えるのだ。
(教訓)
〇理屈よりも現状分析と、それへの対処の方が重要だ。
〇苦労を知らない人間は、現実に戸惑って何もできなくなる。