帝都オーディンを攻略し、幼い皇帝を奪い取る。それを成功させた者こそ、この内戦における最高最大の功労者となるであろう。・・・
戦後処理をするにあたって、最大の功労者が最大の発言権を有するのは当然である。・・・
別動隊の指揮官。最高権力への最短距離。それを他人に渡してはならない。
ブラウンシュヴァイク公とリッテンハイム侯の瞳に油膜を浮かべたような、ギラギラした輝きがあった。
既に問題は、戦略や戦術を離れて、政略の次元へと移っている。森を見ただけで、黒豹の毛皮の値を計算しているのだ。
こうなることは知れていた。・・・高度に統一された意思と組織によってしか実現できない策。本体の指揮官と別動隊の指揮官との間にはゆるぎない相互信頼が欠かせない。
貴族連合軍にはそれがない。だからこそ、ローエングラム侯ラインハルトは、平然としてオーディンを手薄にできるのだ。
(解説)
報酬の設定は非常に重要である。最大の功労者に最大の報酬が与えられるのは当然と思いがちだが、本作戦においては、ラインハルトを自軍の本拠地におびき出して、帝都を空にさせて、その隙に帝都と皇帝を奪取するわけだかが、誘き出す方にもそれ相応の報酬を与えなければ、別動隊が活きない。つまり、別動隊の成功には、誘い出す軍隊への報酬も用意しなければならない。どちらかがではない。どちらもなのだ。
上記の如く、報酬の設定が誤ると、戦略や戦術などまるで役に立たない。それこそ政略になってしまう。誰もが報酬を最大限に得られることに注力するのは、人間なのだからやむを得ない。報酬がもらえないことに一生懸命になる奴などいない。
従って、戦略や戦術を重視するための報酬設定を忘れてはならない。その報酬設定一つで、組織にひびが入り、最終目標を達成できないことがある。
(教訓)
〇美味しい所だけを持って言った奴を勝者にしてはならない。チーム全体で勝ち得たものならば、チーム全体でその報酬が配分されるべきだ。
〇報酬設定が誤れば、戦略や戦術を無にしてしまうこともある。
〇往々にして政略は、戦略や戦術を無にする。