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リーダーは自ら組織の改革者となれ

帝国が実際にイゼルローン要塞を建設するまで、同盟にも要塞建設の構想がなかったわけではない。ブルース・アッシュビー自身もその構想を抱き、初歩的ながら設計図を国防委員会に提出したことがある。ただ。彼自身は大艦隊を指揮統率する魔力に憑りつかれており、この設計図は艦隊戦力強化案が最高評議会で求められるのと引き換えに、廃棄されている。軍事は巨額の金銭を食う。どうせ費用がかかるなら、要塞より艦隊に使うべきだ、というのがアッシュビーの用兵思想であったらしい。それはそれで、戦将の面目というものである。

(解説)
同盟のアッシュビーも要塞建設を考えていたようだが、自分が艦隊好きだったこともあって、軍事予算が艦隊戦力強化に向けられ、要塞建設には向かわなかったという。要塞は戦艦よりもなお巨大であり、趣は異なるが、どこか「大艦巨砲主義」と思い浮かべる。

大鑑巨砲主義とは、艦隊決戦における敵艦隊撃滅のために大口径の主砲を搭載し重装甲の艦隊を持つ戦艦を中心とする艦隊を志向する海軍軍戦備・建艦政策及び戦略思想のことである。19世紀末頃から蒸気機関の発達などにより、大型で拘束の艦艇が作れるようになり、艦砲は大型化し、射程も伸び、威力も大きくなる。そこで大型の軍艦に大型の砲をより多く搭載しようという考え方に至る。

そもそも飛行機はライト兄弟の世界初の有人動力飛行が1903年のことだから、20世紀初期、1906年のドレッドノート級戦艦をイギリスが開発したときには、どの国も航空機を戦場に導入しようという発想は乏しかったに違いない。しかし、1915年にはフランス軍やドイツ軍も戦闘機を導入していたというのだから、技術の進歩とは早いものだ。この技術の進歩に組織がついて行かないということは、旧日本軍を見ていればよくわかる。

大艦巨砲主義にとらわれていなくとも、日本の戦力が当時の連合軍に対抗し得るとは思えないが、大艦巨砲主義に反対していた日本海軍の航空主兵論者たちは、海軍が大艦巨砲主義から航空へ切り替えられなかったのは、組織改革での犠牲を嫌う職業意識の強さであるという。「大砲がなかったら自分たちは失業するしかない。・・・兵術思想を変えるということは、単に兵器の構成を変えるだけでなく、大艦巨砲主義に立って築かれてきた組織を変えることになる・・・」

こうやって既得権者によって、組織の改革はなかなか進まないという事である。組織の最大の既得権者は、代表を始めとした幹部連中である。やり方はなるべく変えたくはない。そこを心を鬼にして、自らのリスクと損失の元に、組織の変革を行わない限り、次第に腐りきっていく。リーダーは組織のために、自ら改革者となり、既得権者を潰せ。自分が既得権者に留まるな。

(教訓)
〇リーダーは自らが組織の改革者となれ。既得権者のままで居続けるな。組織が腐る。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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