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責任者も実務部隊と行動を共にせよ

ガイエスブルク要塞のワープ実験が行われる当日、要塞には技術部門を中心に1万2400名の将兵が乗り込んでいた。ケンプ、ミュラーの両提督がその中にいたのは無論だが、科学技術総監シャフト技術大将も乗り込んだことには、意外な思いを抱く人々もいた。

一説によれば、最初は、シャフトはローエングラム元帥のそばにあってこの実験の成功を見守ることを望んだが、若い美貌の元帥は冷然として、「卿にとってガイエスブルク要塞の司令部こそ、座るにふさわしい場所であろう」と言い、渋るシャフトに要塞に乗り込むよう命じたのだ、ということであった。

聞いた人の多くはそれを信じた。真実であるという証拠は何らないのだが、シャフトの人柄から言えば、貴賓に近い、しかも安全な席から危険な実験を遠く見守る、というのは、いかにもありそうなことと思えたのである。もっとも、実験が失敗した場合、ラインハルトの傍の席はシャフトにとって決して安全な場所とは言えなくなるであろう。

(解説)
ワープが成功するかしないかわからない、と言う状況であって、安全とは言い難かったため、科学技術大将は、安全な場所からみて、失敗したら、こっぴどく怒られるだけで済むならいいのだが、今回の事件では、大軍を危ない要塞に乗せるわけであるから、失敗しました、ごめんなさいでは済まない。最悪、軍隊においては、大将の地位をはく奪されるだけでなく、死刑ということもないわけではない。こんな状況下にあっては、失敗したら、責任者もワープの時空の谷間から出てこられないような、状況になった方がはるかにましだろう。

あくまでも戦争下の軍隊においての話だが、一般のビジネスにおいても、責任者が安全なところにいることは、正直許されざることだ。特に実務部隊の責任者であれば、部下と共に危険を共にすべきであろう。同じ危機を味わった同士では、さらに結束も強まる。また、理論的なことは、科学技術大将が最もよくわかっているわけだから、危機的な状況下における判断も最も適切なはずだ。

危険から遠い所にいれば、適切な判断を見誤る。リーダーこそ危険なところに身を曝し、的確に部下を指示し、成功の確率を高める責任がある。そもそも今のリーダーがのほほんとしているのは、失敗したときの責任が軽すぎるのではないだろうか。

リーダーの意思決定によって、部下が死ぬ危険があれば、リーダーは失敗したら死ぬべきだし、部下が路頭に迷う危険があるならば、リーダーも真っ先に路頭に迷うべきである。つまり、翌日から給料もなく、全ての資産を会社に没収され、自らは会社から追われるくらいでなければ、誰が真剣になるだろうか。

(教訓)
〇リーダーは安全なところで見ているのではなく、最前線で部下と共に汗を流せ。
〇リーダーは部下以上の現実的な責任を負わない限り、真剣になるわけがない。危機感が足りず、のほほんリーダーが多いのは、責任を負わずに済むからだ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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