「犬や猿に向って正論を解いても無益だ。大貴族共、とくに若い貴族共の自我は、度を知らぬ。限度、節度、程度等というものは奴らの辞書にないのだからな」
「言わずにいられなかったのだ」
憮然としてミッターマイヤーは答え、それを聞くとロイエンタールとしても何も言えなくなる。そこで身の安全を慮って沈黙するようでは、ウォルフガング・ミッターマイヤーと言う人間の存在価値はない。
「先祖代々の公爵より、一代でのし上がった伯爵の方が、はるかに才幹があるだろう。今の皇帝には男児がいない。近い将来の宮廷抗争は目に見えている。いずれ相争う権門の一つに身命を託さねばならぬとしたら、卿にしても俺にしても、より才能と器量に優れた人物を盟主として仰ぎたいではないか」
(解説)
ミッターマイヤーとロイエンタールはクロプシュタット候によるブラウンシュヴァイク邸の爆発事件において、その騒乱の後始末をするための戦闘技術顧問を務めていた。現場で暴力をふるい、金品を強奪した大貴族のバカ息子をミッターマイヤーが軍規違反を見過ごすことができず、法規に基づいて射殺した。しかしこの射殺された人物がブラウンシュヴァイク公の親族であったため、ミッターマイヤーの方が捕られてしまった。そこで、ラインハルトに助力を請うたわけである。
人間の中にも、こいつは人間だろうか?と言う奴も多い。犬や猿だと思った方がちょうどいい。何言っても通じないような奴らだ。正論を解くだけ無駄。犬が吠えているとか、猿がキーキー言っているくらいに達観した方がいい。SNS等で誹謗中傷されたときは、そんな心境でちょうどいいだろう。相手が人間だと思うから、受信者が落ち込むのだ。
ミッターマイヤーは感情に任せて射殺したのではなく、あくまでも法規に従っている。法律違反を犯さない限り、自分の芯は通そう。
ロイエンタールはラインハルトについて、「先祖代々の公爵より、一代でのし上がった伯爵の方が、はるかに才幹がある」と評している。会社の経営者で一代目か二代目かは雲泥の差がある。二代目三代目にもそれなりの苦労があることは分かるが、一代目ほどの才能があった人を見たことがない。従うならば、一代目のリーダーだね。単に仕事をするだけであれば牛の後にくっついていた方がいいが。牛になると二代目か三代目の会社になる。まあ、もうすぐドナドナかもしれんが。
(教訓)
〇SNSで誹謗中傷されても、犬や猿がなんか言っているくらいの気持ちで達観せよ。
〇法律違反を犯さぬ限り、自分の芯は通せ。
〇初代に勝るリーダーはなし。