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一つの事を多角的に言えば、重みが増す

「私が噂通り7人目の裏切り者になったとしたら、事は全て水泡に帰します。そうなったらどうします?」
「困る」
ヤンの真剣な表情を見て、シェーンコップは苦笑した。
「そりゃお困りでしょうな、確かに。しかし困ってばかりいるわけですか?何か対処法を考えておいででしょうに」
・・・「なにも思い浮かばなかった。貴官が裏切ったら、そこでお手上げだ。どうしようもない」
・・・「どういたしまして。すると私を全面的に信用なさるわけで」
・・・「だが貴官を信用しない限り、この計画そのものが成立しない。だから信用する。こいつは大前提なんだ」

(解説)
ワルター・フォン・シェーンコップ大佐は、同盟軍陸戦総監部に所属するローゼンリッター連隊の大将であるが、帝国から同盟へ亡命してきた者の子孫である。ヤンは、イゼルローン要塞の攻略のために、潜入工作をシェーンコップに依頼した。元々は帝国側だったわけで、シェーンコップは自分を信用していいのかを尋ねたところ、ヤンは、信用しなければ計画自体がおじゃんだという言い方をした。

無理難題をお願いするときのおまじないの言葉がある。「あなたを信用しています」。その言葉で受け取った人が全て納得しているかというと、そんなことはない。信用しているというだけで、どんな戦略かも、勝手に考えろと丸投げされてしまうわけだ。

その一言に、意気を感じて、重い腰を上げることもある。強烈な一言であるに違いない。ヤンは、単に「信じている」というだけでなく、「困る」「裏切ったらお手上げ」「信用が大前提」とありとあらゆる言葉を投げかけている。要するに「信用しきっているから、後は全てよろしく」とぶん投げているわけだ。

一つの言葉を多角的に表現すれば、より重みが増すということだ。

(教訓)
〇大変な仕事こそ、依頼先を信頼しきれ。
〇一つの言葉を多角的に表現すれば、より重みが増す。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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