「ヤン少将、考えて見れば我が同盟軍は用兵の根幹においては誤っていなかったわけだ。敵の二倍の兵力を戦場に投入している。にもかかわらず惨敗したのは何故だ?」
「兵力の運用を誤ったからです・・・多数の兵力を用意したにもかかわらず、その利点を生かすべき努力を行ったのです。兵力の多さに安心してしまったのでしょう・・・レーダーと電子工学が奇形的に発達していた一時代を省いて、戦場における用兵には常に一定の法則がありました。兵力を集中する事、その兵力を高速で移動させること、この両者です。これを要約すれば、ただ一言、『無駄な兵力を作るな』です。ローエングラム伯はそれを完璧に実行してのけたのです」
(解説)
アスターテ会戦で、同盟軍が実質的に敗北した理由を、シドレ元帥がヤンに尋ねた。
過去、アメリカ軍が実質的に敗北したといわれているのはベトナム戦争であろう。アメリカが支援していた南ベトナムは200万人を動員、ソ連や中国が支援していた北ベトナムは126万人であるから、南の方が戦力的には圧倒していた。それでも勝てなかったのは、地の利であり、その土地に応じた兵力の効率的な運用ができなかったということではないか。
アスターテ会戦の敗北理由は、兵力を集中し、兵力を高速で移動する、そして無駄な兵力を作らないということを同盟側が怠り、ラインハルトの方がその用兵の法則を守ったということである。端的に言えば、戦力の効率的な運用にあった。
大きいことはいいことだ、という時代は、コロナショックをきっかけに完全に変わってしまったといってよい。図体がでかいことがデメリットになる時代である。多くの従業員を抱えていれば、安定した時代は圧倒的に強いが、戦力になり得ない事態になると突然、金食い虫の不良債権になってしまう。多くの従業員を一か所に集めれば、不動産も大きくなる。ひいては固定費の賃料もかかる。
時代に合わせて、柔軟に生きることが重要であり、その点では、数や大きさではなく、従業員を戦場に集中し、高速で動かすこと、無駄な従業員を抱えないこと。経営資源が大きいから勝てる時代ではない、柔軟に、効率的に経営資源を投下できた会社が勝ち組になる。
(教訓)
〇経営資源を集中し、高速で動かし、無駄を作らないことが重要。
〇効率的に経営資源を投下できた会社が勝ち組になる。