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本拠地を持たぬ強み

ヤン・ウェンリーは一戦ごとに艦隊集結地と補給地を変え、移動しつつ戦っている。

かつてラインハルトが天才によって直感して事実が他の提督たちの目にも明らかになると、帝国軍の驍将たちは、一瞬、声がなかった。この意味するところは、ヤンが特定の根拠地を持たず、むしろそれを積極的な戦略思想として確立しつつあるということだ。

「まいったな、同盟領それ自体が奴の基地になっているというわけか」

・・・これはいわば正規軍によるゲリラ戦というわけであり、帝国軍は本拠地を持たぬ敵を追って戦わねばならないのである。その困難さを考えると、今まで彼らが踏破してきた一万光年余の征路も、長いものと思えなくなるほどだった。

考えてみれば、イゼルローン要塞をさえ、あっさりと放棄してのけたヤン・ウェンリーである。ハードウェアとしての根拠地に執着しないのは予測しえたが、ここまで徹底するとは、空恐ろしいほどであった。

(解説)
根拠地を持たぬ戦略思想。これは今後のビジネスにおいても大いに参考になる。今までのビジネスの常識は、本社を物理的に持つことであった。本社ビルを建てるでなく、本社ビルとして借りるでもいい。しかしもはやそんなことがタダの馬鹿に近くなっている。本社は登記上の住所だけでいい。問題は本社機能である。そしてその本社機能も、引越でいくらでも変わりうる。テレワークが当たり前、本社へお客様にお越しいただく必要すらあるのか、ということになる。だいたい、都内にどでかく本社なんて、賃料が高くてやってられないよな。しかも給料の高い従業員をそこに通わせるのも無駄。地方でいいよ。実家で働け。都内で暮らそうとするから高い給料を払わなければならんのよ。家族を持ったら郊外にマイホーム。通勤手当もバカにならない。そもそも通勤時間が無駄だよな。本来、通勤時間も交通費以外に労働時間として認めるべきだと思う。それくらいやらないと変わらないのではないか。

もちろん現状ではそんな簡単には変わらない。既存の企業は本社をどこかに借りて、優秀な人材を集めてにこだわるかもしれないが、新しい企業はもはやそんな物理的な本拠地にこだわりを持たなくなっていく。本社機能は、場合によってはネット上にあれば充分である。後は幹部連中も家で働いてくれになるだろうし、彼女と、家族と、あるいは愛人とディズニーランドで遊んでいるときに、と言うか遊ばせておいて、自らはモバイル片手にビジネスをしてしまうのが当たり前の時代になってくるだろう。

お客は要するにサービスが受けられればなんだっていい訳だ。そのうち、メインのビジネスなんて言うのも、なくなる時代になるかもしれない。数年ごとにメインのビジネスが変わる、今では何をバカなことを言っているんだい、と言われるようなゲームチェンジが、今、コロナショックによって起ころうとしている。

(教訓)
〇本社機能を持たぬことに強みがある。
〇メインビジネスがないことに強みがある。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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