シェーンコップはウィスキーの瓶を口元に運びかけて、途中で降ろした。
「銀河帝国は和平の代償として、ヤン提督の生命を要求するかもしれない。政府がそれに応じてヤン提督に死を命じたら、その時はどうする?易々諾々としてそれに従うのか」
少年お顔は硬直し、彼は断言した。
「そんなことはさせません、絶対に」
「だが、政府の命令には従わねばならんのだろう?」
「それは提督の問題です。これは僕の問題です。僕はローエングラム公に屈服した政府の命令に等従う気はありません。僕が従うのはヤン提督ただ一人の命令です。・・・」
・・・
「ありがたいお話です、ヤン提督。ですがあなたが残って責任を囮になるのに、私だけが逃亡して身の安全を計れるとお思いですか」
リンツは黒髪の元帥をみやった。
「私としてはいつか必ずヤン提督に私どもの総指揮をとっていただきたい。あなたがいらっしゃるかぎり、『薔薇の騎士』連隊はあなたに忠誠を誓うものです」
「他人がこんなことをしたら、アホウに違いないと私も思うだろう。だけど、私は結局こんな生き方しかできないんだ。かえって、私の好きな連中に迷惑を強いると分かり切っているのになあ・・・」・・・
「わたしにはわかりません。あなたのなさることが正しいのかどうか。でも、私にわかっていることがあります。あなたのなさることが、私はどうしようもなく好きだということです」
(解説)
ユリアンは基本的に政府のいうことに従うが、ヤンを害するようであれば、政府のいうことには従わない。メルカッツはヤンの提案を聞き、同盟軍の戦力を一部隠すために、戦場から去った。そしてリンツは総指揮をヤンに取ってもらいたい、そして忠誠を誓うといい残した。さらにフレデリカはヤンのやっていることが「正しいかどうかはわからないが、そのやっていることが好き」という。こうまでして愛されるヤンであった。
正直、成果を出そうと出さなかろうと、本当に成果が出るかなんてやってみないと分からないことが多いのだ。そのときに、そのリーダーについていきたいかどうかというのは、理屈抜きでリーダー本人と、彼のやることが好きだからだ。論理的に考えれば、失敗する確率は高いが、まあ、そんなことはどうでもいい。戦争になれば、命を投げ出すことになりかねないが、ビジネスの世界では命まで取られることはない。どんなリーダーについていくかは所詮、好きか嫌いかだけしかない。
好きな人が失敗し、嫌いな人が成功するのが世の常だが、そんな嫌いな人に従っていても精神衛生上よくない。
(教訓)
〇真のリーダーは理屈抜きで愛される。