「ビュコック提督、ホーランドの跳ね上がりを制止するのに協力していただきたい。奴は旧い戦術を無視することは知っていても、だからとて新たな戦術を構築しうるとは思いません」
「だが、ウランフ提督、今のところ彼は順調に勝ち続けているようだ。あるいは、コールド・ゲームで勝ってしまうかもしれん」
「今のところ、と言う奴がいつまでも続けばよいが、限界は目前に迫っていますぞ。帝国軍にほんの少し遠くが見える指揮官がいれば、混乱の渦中から身を引いて、逆撃の機会を狙っているはず。この際憎まれても彼を制止して後退させねば、吾々も道連れにされかねません」
「勝っているときに、あるいは自分でそう信じているときに交代するのは、女に振られたときに身を引くより難しいだろうと思うよ、ウランフ提督」
・・・この上は、彼らとしては第十一艦隊の敗滅が全軍の崩壊に直結せぬよう努力する以外に途がなかった。
(解説)
自信がある人間に共通することは、旧い(以下「古い」とする)戦術を無視することである。その中でも成功する人間は、新たな戦術を構築できる人物だろう。古い戦術を無視するだけならまだいいのだ。知らない奴はもっと悪い。そんな人物だらけだ。世の中の新しいことなんていうのは、実は誰かがどこかで考えていることばかりである。
何故その新しいことが今、普及していないのか? それは、そのままでは問題があって、失敗してしまうから、世に出ていないだけの話だ。だからまずやらなければならないことは、新しいことを考えること以上に、古いことを徹底的に追及することである。古いことというのは、本当の意味で古いことではなくて、自分が新しいと思い込んでいた、実は誰かがどこかで考えていた古いことである。自分が知らないという事は、本当に自分が知らないことが9割9分であると思った方がいい。厳密に言えば、自分が知らないと思っていただけ、つまり、単なる調査不足なだけだ。
自分でも考えてみたが、誰かがどこかで考えた古いことを探してみる。全く同じようなことは見つからない。そうであれば、既にうまくいっているあることと別なことを組み合わせて、自分のアイデアが実現できないかを考えてみよう。そうすると、上手くいっていることの組み合わせならば、外れることがないことだけは分かる。そこに完全に自分が考えたこととの差異を自分で埋めるだけでいい。
さて、仕事をやっているとイケイケガンガンなときがなくもない。飲食チェーンで、次々と店舗を拡大していくときはそんなイメージだ。しかし拡大しすぎるとどこかで打ち止めはある。その時に撤退戦略も描いておかないと、取り返しにつかないことになる。最低でも会社全体に被害が及ばなければいい位の消極的な解決もやむなしということになるだろう。むしろ、イケイケガンガンなときほど、ブレーキをかけた方がいいだろう。それだけリーダーがワンマンだと難しい。
(教訓)
〇新しいことを考えるよりも、古いことをむしろ徹底的に追及せよ。古いことの組み合わせで新しいものを創造せよ。
〇イケイケガンガンなときほど、ブレーキをかけよ。