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パートナーと想いを共有せよ

ウランフ麾下の同盟軍艦隊は、ラインハルトに対しては雪崩を打って退きつつ、そのまま前方宙域に殺到して、ミュッケンベルガーに対しては全面的に攻勢に出た。皮肉なことに、ラインハルトは間接的に味方の帝国軍に対して、支え難い圧力をかけることになり、帝国軍は悲鳴を発して救援を求めた。
「こちらこそ今度は見殺しにしてやろうか」
一時、ラインハルトは真剣にそう考えた。小さな復讐の快感は、だが、長くは続かなかった。彼には巨大な目的があったし、それを補佐するだけでなく、共有してくれる同志がいるのだった。ラインハルトに意見を求められて、赤毛の友は答えた。
「ラインハルト様にはお分かりのはずです、10人の提督の反感など、100万人の兵士の感謝に比して、取るに足るものではありません」
「そうだ、その通りだ、キルヒアイス。どうせ俺は提督連中に憎まれている。奴らは俺に助けられても、不愉快に思うだけだろう。だが兵士たちは確かに違うな」

(解説)
個人の恨みやつらみが、人生のエネルギーになることはあるが、それを貫徹するために、組織に負担を強いてはならない。個人の想いと会社の想いは別と考えるべきだ。

また、オーナー経営者にとってみると、法的には自分のものだという意識が強い。そうすると何でもかんでも自分の好き勝手にできるように錯覚してしまう。好き勝手にやった結果、会社がこけたら、そこで給料をもらっていた人は路頭に迷う。転職できる人ならばいいが、誰しも彼もそんなわけにはいかない。銀行返済もままならず、仕入先にも代金を支払えないことにもなりかねない。そこまで大げさなことにならなくとも、ちょっと会社の経営が傾いただけでも、ボーナスは減るし、給料も減るかもしれない。

これだけ多くの利害関係者がいる中で、法的に自分のものだと言い張ったところで、完全にそんなことは言えないのである。どんな損失が生じても、自腹でカバーできる。誰にも何の影響もないということであれば、まだしも、株主にだって、株価が下がった責任は負いきれるわけもない。いくらオーナー経営者であっても、会社は自分のものだという発想をやめろ。

上記ラインハルトの例では、巨大な目的と、共有してくれる仲間がいるわけだから、自分の想いよりは、それが全員の想いであるかどうかを考えよう。全員の想いを叶えるための会社組織であって、自分の想いだけを叶えるための組織ではないのだ。自分でいい思いをしたければ、個人経営で誰も雇わず、誰も使わず、勝手にやれ。

(教訓)
〇個人の想いを会社の想いと等号で結んではならない。
〇どんなオーナー経営者であろうと、利害関係者が生まれたら、会社は自分一人のものではない。
〇会社とは巨大な目標と、想いを共有してくれるパートナー、利害関係者のものである。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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