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変動給制度を有効に活用し、役員と従業員のベクトルを共有せよ

「ふん、話したって無駄さ。士官学校出身のエリートさんに、下積みの兵士の苦労や心情がわかるかよ!」
型にはまった発言だった。だが、批判が常に独創的である必要もないであろう。軍隊組織という存在の愚劣さは、この種の類型的な批判が、ほとんどの場合、正しく的を射る、という点にある。この場合。ヤンという個人と、エリートという一般名詞その間に横たわる亀裂の深さまでは発言者の知る所ではない。それを他者に理解してもらおうというのも高望みであろう。だいたい、「死ね、殺せ」と命令する側の人間が、命令される側の人間に理解や共感を求めるなど、不遜の極みであるに違いなかった。

(解説)
「士官学校出身のエリートに、下積みの兵士の苦労や心情がわかるか」。どの組織にも言えそうだ。政治家や高級官僚にこのような人物がいても、まあ、そうだろうな、と思わなくもないが、これが経営者でそういう人がいたら、なんで?と思わなくもない。地位が人を変えてしまうのであろうか。もちろん、二代目や三代目は上記に同じであることは言うまでもない。

さて、経営者と従業員は、本来目標が同じベクトルのはずなのだが、そうではないのが現実である。経営幹部は、給料が同じならば、従業員にもっと働いてもらいたい。従業員は給料が同じならば、働きたくないと考える。

命令する側の人間と命令される側の人間の最大の違いは、命令する側を経営者とすれば、命令する側はビジネスに対するリスクを負っている。つまり会社の売上が上がり、利益が出なければ、自らの役員報酬を獲得できないどころか、借りたお金も返せないし、仕入先や外注先の支払にも窮する。それに引き換え、従業員は会社の売上がどうなろうと、利益が出なかろうと、基本的に約束した給料はもらえる。但し、資金繰りが苦しくてもらえない場合はあるが、これはまた別の話である。

これだけビジネスに対して負っているリスクが異なれば、お互いが理解や共感を求めることが難しくなる。それゆえ、お互いが理解や共感を少しでも得られるようにするためには、多少、従業員にもリスクを負ってもらうしかない。そのうちの一つが、変動給という考え方である。リスクを負わせたらリターンも同時に与えるのがビジネスだ。会社に利益が出れば、自分の給料も増える。従業員としては、報酬が安定はしないが、稼げばもらえるわけだから、このような考え方の報酬制度の方が、ウィンウィンではないかと思うのだ。賞与によって会社の業績と連動させる会社も上場企業には多いが、自分の会社に対してもたらした成果給要素が乏しいだけ、経営幹部とのモチベーションとはリンクさせづらい。

(教訓)
〇会社の報酬制度は変動給をメインとせよ。
〇変動給により、経営幹部とのベクトルを合致させよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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