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管理は緩やかに

ヤンの退役生活が息苦しいものになっていったのは、金銭的な面においてではなかった。

最初の兆候は、コールダレーヌでの短い山荘生活において、既にあらわれていた。鱒を釣るために湖に糸をたらしているとき山地の夜の冷気に抗して暖炉を薪に放り込んでいるとき、牧場直営の売店で搾りたてのミルクを買っているとき、ヤンは彼らを冷たく観察する視線の存在を感じて、疎ましい思いに襲われた。
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さらに、ヤンをうんざりさせたのは、外出の都度、訪問先と帰宅予定時間を申告するよう要求されることだった。現役と退役とを問わず、高級士官は公人としてその所在を常に政府に把握せしめる必要がある、と言うのがその理由であった。

(解説)
帝国が同盟側を監視下におき、実はヤンはメルカッツ提督を逃がしたり、新しい旗を立てるための準備をしていたわけだが、そうは言っても、監視がきつすぎて、次第に嫌気がさしていた。準備ができないからというよりも、単にプライベートまでないような状況なので嫌になったという方が強い。もちろん、それだけヤンは重要人物であり、反帝国の先頭に立ちうる素材だったというのも大きい。

会社と従業員の関係は、もっと希薄なものになっていく、と想像される。既存の現象としては、終身雇用制度や年金序列制度が崩壊してきている点、そもそも新卒採用の若者たちが、3年弱での退職者が多い点、コロナショックにより、従業員の生活を守ることを政府よりも企業に押し付けてしまったこともあろう。会社に余力がなくなれば、それだけ正社員と言う固定費と賄いきれなくなってくる。ましてや、コロナショックのような感染症が、より頻度が高く起きれば、より事業体力を失っていくことが考えられる。

経済原理を考えると、企業が安定的に従業員を雇用することがリスクであり、中長期的にコストになってきているということだ。さらに働き方改革、あるいは定年退職時期の高年齢化等、雇ったら負けのような状況が起きつつある。今やネットで、フリーランスという労働力を確保しやすい時代背景もある。

優秀な人だからと言って、全員経営者を希望するわけではない。しかし優秀であればあるほど、会社の拘束がはっきり言ってウザい。仕事すりゃあいいんだろ、結果を出せばいいじぇねえか。一々うぜえんだよ。これが優秀な従業員の心の奥底の本音なのだ。だから、ある程度の自由を認めてあげないと、優秀な人材が確保できない可能性も高まる。

副業もOK。テレワークOK。結果だけ出せば後は何しても自由。そういう緩い管理ができる、しかし結果も残させる会社が、優秀な人材を確保し、これから生き残れる会社になるであろう。

(教訓)
〇管理が緩やかだが、成果を出させる会社がこれからは生き残る。
〇管理がきつい会社には、優秀な人材が集まらなくなる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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