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街角観察こそがマーケティング

駐在武官の重要な任務に情報の収集分析があり、街角で市民生活を観察するのも、立派な仕事だった。・・・

裏通りを覗いた後、二人は一軒の衣料品店に入った。・・・
「物価は安定している。品質は良い。それに事故が少ないという事は、社会と経済を運営するシステムも弱体化していないってことだね」

形式は形式として遵守せねばならない、というわけだろうか。その翌日、新任の仲裁武官を歓迎するパーティーがホテル・バタビアで開催された。・・・

「どうです、フェザーンの印象は、少尉?」
「そうですね、裏街が清潔なのに感心しました。それと、ペットの数が多くて、どれもよく太ってますね」
「ほう、変わったところに興味をお持ちですな」
・・・裏街が清潔であるのは、公共社会を管理運営するシステムが順調に作動していることを意味し、ペットの数が多く、栄養が良いのは、市民生活に少なくとも物質的な余裕があることを示している。日常レベルの風景から、フェザーンの充実した国力の一端を観察しえたことを、ユリアンは示唆して見せたのだが、相手はそれを理解できなかったようだ。

(解説)
駐在武官の任務に情報の収集分析があった。街角の市民生活の観察、という一見何でもないことの中にも、ビジネスのヒントは隠されているものだ。

経営者は常に、市民生活にアンテナを張り巡らせていなければならない。特に消費者を相手にするB2Cのビジネスの経営者にとっては、消費者動向を知るのが、仕事である。何もマーケティング会社に、市場調査を依頼するだけが全てではない。むしろ、自分の肌で感じた実感が、ビジネスのネタにつながる。

ユリアンは裏街の清潔さに公共社会の運営システムの健全性、ペットの数に市民生活の物質的な余裕を見て取った。表通りだけを見ていてはダメで、さらに人間だけを観察していてもダメである。他人があまり観察しないところを観察しなければならない。

(教訓)
〇街角を見るのも、マーケティングである。
〇他人が見ないところを観察せよ。そこにビジネスのネタが転がっているかもしれない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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