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リーダーは深慮遠謀たれ

非常に美化して言えば、ヤン・ウェンリーは深慮遠謀な人であったが、必ずしも臨機応変の人ではなかった。このとき、轟音と閃光と、落ちかかる建材の破片の中で、ヤンが選んだのは、最も安直で効果的な方途であった。彼より有能な他人に救いを求めることである。

「15年前に廃棄された通信用ケージ。地下を縦横に走っとる。ここに潜り込んで難を避けるとしようか」
「なぜこれを使って脱走しなかったのです?」
「わしは計画を樹てるのは好きだが、失敗するのが嫌いなのでな。実行するにはつい腰が重くなるのさ」

(解説)
深慮遠謀(しんりょえんぼう)とは、遠い将来のことまで考えて周到に測りことを立てること。深謀遠慮も同義である。似たような文字なのでどちらが正しいのか戸惑うこともあるが、結論としてはどちらも正しい。対義語は軽率短慮。よく考えないで、軽はずみに物事を決めたり、行動をしたりすること。

リーダーに求められるのは、当然深慮遠謀のほうであるが、軽率短慮、いつも直感で動く人は少なくない。直感をバカにするわけではないが、大抵直感ばかりで動いている奴は、上手くいった試しがない。直感は、今までの人生を凝縮して、その中でした数多い失敗と成功例等から導く閃きであるはずなのだが、当人はそれを直感と呼ぶが、単なる思い込みと呼べることの方が多い。直感と何も考えないのは同じではない。

さて、ヤンは、この場でどうにも助かる方策を考えられなかったものだから、自分で考えずに、この現場を良く知る者に判断を託した。安直ではあるが、何でもかんでも自分で考えなければならないものではない。自分よりも優れていて、状況を把握している者が身近にいれば、その者に従った方が経済的である。誰に最善策を聞いたらよいかを知っているのも、リーダーとしての資質と言える。

計画を立てるのが好きで実行しない奴はよくいる。事業計画を立てて、これだけ儲かるのか、あるいはこんな構想があって、かなり儲かるぞ、よし、といって動かない。これはリーダーではない。リーダーは自ら計画を立てて、自ら動く人物である。考えるのが好きなだけだったら単なる夢想家にすぎない。

(教訓)
〇リーダーは深慮遠謀たれ。
〇リーダーは最善策を自ら常に考えることはない。誰に訊けば最善策を知っているか、その誰かを知っていることもリーダーとしての資質だ。
〇計画を立てて、実行できるか、それがリーダーである。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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