基地司令官シンクレア・セレブレッゼ中将は、40代後半の年齢で、実戦指揮より後方勤務の経験が長い。ヴァンフリート4=2に配備されたのも、総司令部からの要求に応じて、必要なときに、必要な数量の兵士や軍需物資を、必要な宙域に送り出す。その制御及び調整が、今次大戦における彼の任務であった。セレブレッゼの事務処理能力をもってすれば。とくに困難な任務ではない。ただ。彼は戦術即応能力にはさほど自信がなかったので、1000キロ単位の近距離に敵軍の大艦隊が進駐してきたとあれば、事務的な冷静さを保ってはいられなかった。
まして、帝国軍の意図が明らかではない。係数や事務処理に長じた頭脳は、しばしば想像力の欠如を伴う。
(解説)
同盟のセレブレッゼ中将は、会社の組織でいうところの管理部長であって、営業は苦手というタイプであろう。管理は100%ミスらずにやることが普通、と考えられている。現実は、ミスは起きる。人間だもの。営業はミスっていいわけではないが、上手くいかないことの方が前提、つまり、営業に行っても結果が出ないことがある、それを許容するため、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、という考え方にならなくもないし、ミスはどこかで取り返せばいいと考える。最終的に帳尻が会えばいい、が許される世界である。
これは程度問題であって、ミスを取り返せばいい事務、絶対にミスが許されない営業という場面がないとは言えないが、それほど多い話でもない。会社の嫌がらせで、今まで事務をしていたものを営業で使おうとしても、上手くいくわけがない。上手くいかないことを期待しているからどうでもいいのだろうが。管理は守り、営業は攻め、性格から能力まで真逆である。営業もやらされる事務は、気が散って大変である。野球はルール上攻守が入れ替わる。サッカーは自らの意思と相手の力関係等で攻守が入れ替わる。営業と事務をやらざるを得ないとしたら、サッカーのようにモードを自分自身で入れ替えないといけない。
このセレブレッゼ中将を別の面からみれば、平常時には強いが、緊急時に弱いとも言える。事務管理能力の優れた人間は、平常時向きであり、臨機応変に動ける人間は緊急時向きである。前者のような場合、創造性に富む仕事は向かない。そして後者のような場合、間違えないことを前提とする仕事は向かないものだ。組織にはどちらの人間も必要である。それを一人の人で賄おうとしてはならない。
(教訓)
〇営業と事務を両方兼ねざるを得ない場合は、サッカー型のように攻守を切り替えよ。
〇平常時に強い人材は創造性に富む仕事は向かない。緊急時に強い人材は間違えないことを前提とする仕事は向かない。