「・・・と人生相談係のボブラン氏は無責任にのたもうた。所詮は他人の人生である。」
さすがにカリンが形式的な返答もできずにいると、若い撃墜王は今度は声に出して笑った。
「よし、行け、カリン、教えたことの62.4%ばかり実行すれば、お前さんは生き残れる」
・・・
初陣とは自分の未熟さを確認する場なのだ。全ての神経回路でその事実を思い知らされる。
「世の中を甘く見ること!」
世俗の道徳業者が聞けば目を吊り上げるであろう台詞を、カリンは最上の呪文として唱える。
(解説)
アドバイザーは無責任の塊である。唯一アドバイザーがやるべきこととは、自信を付けさせてあげることだ、6割取れればテストは合格と言われる。だから教えたことを6割できれば大丈夫と言ってあげることは正解だ。一つもミスをしてはならないといったら、動けなくなってしまう。
何も62.4%なんて細かく言わなくても、と思うかもしれないが、細かく言われるとアバウトでない分真実味が高まるという効果がある。完全です、ということを、99%と言われるよりは99.99%と言われた方が、より完全ではないかと勘違いさせることができる。
初陣とは自分の未熟さを確認する場とは、起業においても言える。起業で、まさに自分の未熟さを確認することができた。そして自分の無能さを知ることができた。今まで、会社というものを作ってきた社長はすごいとも思った。それまでは、どんな経営者を見ても、もう少しうまいやり方があるんじゃないのと思う方が先だった。もちろん結果を出さない経営者は論外である。自分では結果を出すことができないけれども、会社では結果を出せる勤め人の方が何倍も偉い。
世の中は決して「甘く見てはならない」。必ずしっぺ返しを食らう。甘く見ても余裕なのは、政治家と官僚ぐらいであろう。我々一般人としては、起業してしまえば、とにかくやり切らなければならない。その時に、おどおどいていてはどうにもならない。そこで初めて「世の中を甘く見て」、自分に自信をつけるくらいはしても良い。
(教訓)
〇初心者には6割くらいできればOKと安心させてあげよう。
〇細かい数字を提示するとより真実味が増す場合がある。
〇原則、世の中を甘く見てはならない。甘く見ていい場合は、自分がおどおどして自信が必要なときだけだ。