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反論には常に代案を用意させろ

「昨年、救国軍事会議のクーデターを鎮圧する際に、君は、首都防衛のための巨額の国費を投じて設置された『アルテミスの首飾り』を12個すべて破壊したな」
「はい」
「これは戦略上、やむを得ない手段であったと君は主張するだろうが、しかし、いかにも短気で粗野な選択であった、との感を禁じ得ない。国家の貴重な財産を全面破壊する以外に、何か方法はなかったのか」
「お答えします。ないとおもったから、あの手段を取ったのです。その判断が誤っていたとお考えであれば、どうか代案をお教えいただきたいものです」
「私たちは軍事の専門家じゃない。戦術レベルの思考は君たちの任だ。だが、そうだな、二、三個の攻撃衛星を破壊したとことで、大気圏内への降下を行ってもよかったのではないか」
「その方法を採れば、残存衛星から攻撃を受け、わが軍の将兵に犠牲が出たであろうことは疑いありません・・・将兵の命より無人の衛星が惜しいとおっしゃられるなら、私の判断は誤っていたことになりますが・・・」
・・・
「では、こういう戦法はどうだ。どうせクーデター派の連中は、ハイネセン一星に封じ込められた状態にあった。あえて短兵急な方法を取らなくても、時間をかけて彼らの抗戦の意思を削ぐというやり方をとってもよかったのではないか」
「その方法は私も考えましたが、二つの点から破棄せざるを得ませんでした。第一に、心理的に追い詰められたクーデター派が。局面を打開するため、首都にいる政府の要人たちを人質にする危険性があったということです。彼らが、あなた方の頭に銃を突き付けて交渉を迫ってきたら、吾々としては選択の道がありません。」・・・
「第二は、さらに大きな危険です。・・・クーデター派の自壊をのんびり待っていたら、ラインハルト・フォン・ローエングラムが、大兵力を持って進行してきたかもしれません・・・」
・・・
「以上の二点より、私は短期間にハイネセン解放を成し遂げ、しかもクーデター派に心理的敗北感を与えるための手段を採らざるを経なかったのです。それが批判に値するという事であれば、甘んじてお受けしますが、それにはより完成度の高い代案を示していただかないことには、私自身はともかく、生命掛けで戦った部下たちが納得しないでしょう。」

(解説)
同盟のトリューニヒト派によって、ヤンの査問会が行われた。ネグロポンティの質問にヤンが答えるという形である。

トリューニヒト派にとっても、本土の防衛システムを破壊されたことは痛く、ヤンがクーデターを起こす布石であると疑いと持っていた。

ヤンから学べることは以下の3つである。第一に、相手に反論させるときに、代案を要求することだ。代案を提示できなければ、相手の反論の根拠が失われる。単に反対を言っている野党に魅力を感じないのもそのためである。第二に私の行動はあなた方の利益のためだったと主張すること。上記例で言えば、アルテミスの首飾りを破壊しなければ、兵士を死なせたであろうこと、さらに軍事衛星の方が命よりも大事なんですかと詰め寄る。そして、時間をかけていたら帝国軍が攻めてきたかもしれないし、クーデター派があなた方に銃を向けていたかもしれないという。第三に、自分のためじゃないし、兵士(第三者)に説明してくれるんですかと。

メグロポンティに学ぶことはないが、いわゆる屁理屈としては使える。ヤンが代案を示せというと「私たちは軍事の専門家じゃない。戦術レベルの思考は君たちの任だ。」といって責任を回避することだ。まあ、反感しか持たれないが、政治家や政治コメンテーターは得意としている。つまり代案がないため、その代案を考えるのがお前だろうということだ。何の反論にもなっていないから、屁理屈や問題のすり替えでしかない。

(教訓)
〇反論させるとき、代案を要求すること、自分の行動は質問するあなた方の利益になっているということ、そして、自分のためじゃないし、行動を共にした第三者にあなた方説明してくれますか、ということだ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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