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ビギナーズラックはどうして生じるか

「彼の戦火は、ワルキューレ三機撃墜、そして巡航艦一隻を完全破壊、以上です」
「巡航艦を破壊?初陣でか」
声を上げたのはヤンではなく、新兵たちの訓練の成果を見たいと称して乗り込んでいた要塞防衛指揮官ワルター・フォン・シェーンコップ少将である。ユリアンにとっては射撃と白兵戦技の師に当たる男だ。・・・
「こいつは驚いた。天稟と言う奴だな。俺の初陣だってこんなに派手じゃなかった。この将来、どれほど伸びるか、末恐ろしい気さえする・・・」
「なに、単に一生分の幸運をまとめて使い果たしただけだろう。これで戦いを甘く見るようになったら、かえって本人のためにならない。真に器量が問われるのはこれからだ」

(解説)
ユリアンが戦闘機で初陣を戦い、多大なる戦果を挙げた。シェーンコップは素直に驚き、ヤンは冷めた目で見ていた。初心者が大きな成果を上げることをビギナーズラックという。

さて、このビギナーズラックはどうして生じるのだろうか。まず、初心者だからと言っても必ず成功を収めるわけではないことは確かであろう。しかし、競馬のようなギャンブル、FXや株をやってみたら、最初は大当たりした、ということはよくあったりする。しかし大抵、それでのめりこんでしまうと、大数の法則によって、ベテランと同じ結果に段々なっていくものだ。最初にラッキーが起きてしまうと、同じことがまた起きるという感覚になって、より失敗のドツボにはまり込んでしまう。ビギナーズラックではないが、宝くじに当たった人が、その後必ずしも億万長者であり続けていないことはよく聞く。

そもそもビギナーズラックとは本来なくて、初心者が出した結果は非常に目立つために、ビギナーズラックが存在するように見えるだけ、つまり人の記憶に残りやすかっただけなのである。

新人がいきなり大口顧客を取ってくる場合もあるが、これも新人であるからこそ、記憶に残っているだけである。顧客を上手く落としたというよりは、たまたまその顧客が契約を更新したいと思っていたタイミングで営業に言っただけである。このようなタイミングにぶち当たれば、結果を出した新人でなくても、結果は出すことができたはずだ。

ヤンの言う通り、ここで舞い上がってしまうと、本人のためにならないことが多い。最初は地味なスタートの方が、本人にとってその後、良い結果となると思われる。何故ならば、基盤をしっかりと築けるからだ。

(教訓)
〇ビギナーズラックとは、初心者だから記憶に残りやすいだけの話。
〇最初は上手くいかない方が、しっかりとした基盤を築けるようになって、本人にとって望ましい結果になる。最初から良い結果は出ない方が良い。ラッキーはその人の実力ではない。それを実力と勘違いすると、えらい目に合う。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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