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勝敗は相対的なものだ

ロイエンタールは、レンネンカンプを無能者とは思わない。・・・レンネンカンプには十分な戦術能力と指揮能力がある。但し、その視野は多く眼前の戦場に限定されており、担当する戦域での戦術的勝利を最高の価値とするあまり、巨大な戦局自体を見渡すことができない。
「単なる戦闘屋だ」
というのが、ロイエンタールの評価である。・・・

ロイエンタールは・・・勝敗とか優劣とかは相対的なもので、当事者だけの関係にとどまらず、周囲の条件や環境によって、どうにでも転ぶものだと思っている。
「力づくの攻撃は無益だ」
ロイエンタールはレンネンカンプにそう説いた。
「力づくで奪取できるものなら、イゼルローン要塞の所有者はこれまで五、六回は変わっていいはずだ。だが、唯一それをやってのけた者は、いまイゼルローンにいる、あのペテン師だけだ」
・・・
「面白い意見だが、最も激しく踊るものが最も激しく疲れるというではないか」

(解説)
レンネンカンプのような経営者がおそらくこの世の9割を占めるのではないだろうか。どんなに褒めたところで、いわゆる「単なる事業屋」と言う奴である。それでも十分な戦闘能力と指揮能力を持っているものの、限定的な場所による勝利しか難しく、巨視的視点を全くもたない存在である。

いい時代に経営者になったとか、たまたま美味しい所を掴めた人物であって、それだけでもすごいといえなくもないが、たかが知れている。特に近年においては、環境の変化がはなはだしく、以前の成功者がこれからも成功者であることを保証しない。いつゲームチェンジが起きるわからないのである。

どんなに優れていたとしても、勝ち負けは当事者だけでなく、周囲の条件や環境に大きく左右される。絶対的に勝利できることは保証できないのである。

そのようなことを考えない、単なる事業屋はどんな状況になっても、「ノルマ」を課す。それを達成できないと罵る。単に「最も激しく踊るものが最も激しく疲れる」だけの結果で終わる。

ノルマも、四半期、半期で見直さなければならないし、商品やサービスによっては、極端な話、1か月単位で見直すべきだろう。ノルマだけではない。商品やサービスその物の見直し、ビジネスモデル自体の見直しも必要だ。そのときに経営者が競合や市場環境を熟知していなければならない。

昔、こうしてきたから、これからもこうする、といった輩は、全体像を見ていない愚か者である。優れた経営者は、世の中を大局的に見て、常に従業員に楽をさせられる戦略を立てなければならない。楽をさせる気持ちがないから、全く知恵を働かさず、今の状況すら知ろうとしないのである。まあ、従業員があくせくしているのは、経営者の怠慢でしかない。

(教訓)
〇優れた経営者は、勝敗や優劣を「周囲の条件や環境に大きく左右される」ことを知って、対策を練ることができる。
〇従業員があくせくしているのは、経営者の怠慢でしかない。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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