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店舗型商売のためのエリア戦略

宮本武蔵に学ぶ、

「位置を占めるのに太陽を背にするということがある。太陽を後ろに置いて構える。もし太陽を後ろにすることができないときは太陽を右の脇に置くようにせよ。」

「敵を見下すと言って、少しでも高いところで構えるように心得よ。・・・戦いとなり、敵を追い回す場合には、敵を自分の左の方へと追い回す気持ちで、難所が敵の後ろにくるように、どうしても難所の方へと追いかけることが肝要。敵が難所において、場の位置を見る余裕を与えず、敵が周りを見回すことのできないように。油断なく追い詰めていく。」

「どのようなときにも、敵を追いかけるのに、足場の悪いところ、あるいはそばに障害物のあるところ等、全てその位置の優位さを生かして場所の上で勝利を得るということが大切なのである。」

(解説)

一言で言うとエリア戦略の問題である。自分が優位になり、敵が不利になる場所に、敵をいかに追い込むか。これをサッカーの話で例えてみると、サッカーは実は陣取り合戦であり、ゴールを奪うことは、完全に相手の陣地を攻め切って支配下に置いたことを意味している。完全に支配下に置くために、どの場所に攻め入って、どの場所からシュートを打つか(攻撃の起点を作るか)。守備側はなるべく相手に有利な場所でシュートを蹴らせないようにする。

どのようにその場所にもっていくか、それは個人のドリブル、パス、ロングキック等を用いるが、相手陣に攻め入って、相手のファウルを誘い、徐々に敵のエリアの奥深くに進行していく。次第に自軍に有利な場所を確保して、敵に攻め入る起点とする、あるいは手薄になるエリアを奪う、といった駆け引きが起こる。

仮に相手の右サイドがウィークポイントであり、こちらのストロングポイントが自チームの右サイドであれば、いかにボールや選手を右サイドにもっていくか、つまり陣を取るかだ。また、オフサイドトラップは、守備側からすれば、相手の侵入エリアを制限する戦略と言える。つまり相手に有利な陣地を取らせないための作戦だ。

グアルディオラ氏がバルセロナでやっていたサッカーは、日本人にしてみると華麗なパスサッカーにしか見えていないのかもしれないが、ミドルゾーンでボールを回す、あるいはミドルゾーンでボールを奪い返すことで、攻撃に転じるゲーゲンプレスの要素を多分に含んでいた。このプレスによって、自らのチームの脆弱性をコントロールする。こういった攻撃や守備のプランニングも、全ては陣取り合戦の戦略にすぎない。そして単なるパス回しだけでは有利な陣取りができるわけではない。

サッカーチームは、選手層によって、特定のエリアが強力な戦術しか持ちえていないから、相手方としては、エリア戦略によって、敵に有利な自陣での攻撃の起点を作らせず、自チームが有利な攻撃の起点を敵陣で確保することを意識してやっていけばいい。

サッカーの話が長くなってしまったが、ビジネスに例えても同じようなことが言える。

ビジネスには商圏というものがある。店を置いたときの人の流れから、自店のサービスや商品が、その流れに乗ってくるターゲットに合致しているかどうかだ。お客様の属性は決して無視できない。どう考えても、老人の集まる街に、パフェやクレープ、若者ファッションの店は不釣り合いだ。

つまり店を出すときに、その場所は自社の商品やサービスを好む人がどれくらい多いか、あるいは店を出した後で、その場所に訪れる、通りかかる属性に合わせた商品やサービスを提供できるかが問題となる。店は商売にとっての攻撃の起点になる。

競合店との位置取りも決して侮れない。駅から近くに構えられてしまうと、住宅街でもなければ、その駅の近くの店に多くの人が来店し、奥深くの自店まで足を運ぶ可能性は少なくなってしまう。競合店と比較して、何らか強みを持たせないといけない。ミドルシュートを打ち込めないといけないということになろうか。強みを持つということは、競合他店とは別のエリアになる、ということを意味している。つまり同じフィールドで戦っていないということだ。相手の複数の選手がレッドカードで退場し、数的有利な状態で試合をしているようなものだから、思った通りにゴールが決まる。

[教訓]

〇エリア戦略は重要。店を出したときに底が攻撃の起点となりえるのか。つまり、その商圏にあなたの店の商品やサービスに合うお客はいるのかどうか。

〇自店よりも競合他店が駅近にあると不利に働く。強みが必要になる。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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