宮本武蔵に学ぶ、
「多人数の戦いにおいて、敵が落ち着きがなく、事を急ごうとする気分が見えたときは、こちらは少しもそれにかまわぬようにして、いかにもゆったりとなって見せると、敵もこちらにつられて、気迫がたるむ。そのような気分が敵に移ったと思ったとき、こちらは心を空にして、早く、強く、打ちかかることによって勝利を得ることができる。」
「心に嫌気がさすこと、心に落ち着きがなくなること、心が弱くなること。こちらの心に相手を引き込む。」
(解説)
この文章の前に「あくび」は移ると書いてあった。まさか果し合いの決闘の時に、あまりにも膠着状態が続き、どちらも攻めてこないときに夕暮れときになり、片方があくびをしたら、もう片方がそれにつられて、あくびをしたときに、最初にあくびをした方が、一気に攻め、斬ってしまうなんてことがあったのだろうか。
あくびは、相手に対する共感や関心があるから移るという説がある。そのため、研究結果によれば、家族、友人、知人、見知らぬ人の順で移りやすいという。まさか見知らぬ決闘者同士であくびは移らないだろう。
サッカーの試合でも、わざとゆっくりして、相手もなんとなくゆっくりして、相手の緊張が緩んだのを見計らい、その隙に、一気に速攻をかけ、ゴールまで決めるといったことも見かける。特に、試合中断後の、早いリスタートはこれに当たる。これも「移る」からなのかもしれない。さっきまで中断していただろう、少し休めると思ったのに、と言う気持ちが残り、瞬発力ができらないこともある。
敵の心理を知ろうとするだけではダメで、こちらの思うような状態に変えさせることが勝利のコツと言える。そのために自分が計画的に、意識的に偽のネガティブで気合いの乗らない雰囲気を相手に持たせてしまうということなのだ。
さて、これをビジネスの現場に置き換えてみよう。新人の営業マンが緊張した面持ちである会社でプレゼンしたとする。先方の会社の人はリラックスしているのだが、営業マンが緊張していると、何となく落ち着かなくなる。
逆にベテランの営業マンが超リラックス状態にあると、先方の担当者、あるいは営業される側が何となく緊張していても、リラックスが移り、最初は緊張していた相手がリラックス状態に陥る。そうすると妙に安心感が湧いてきて、営業に対する信頼度も上がってしまう。こういう状況の方が、商品やサービスはよく売れる。
営業中にリラックス状態を作り出すために、いわゆるアイスブレーカーなのだが、その場の雰囲気が和む話題を良く振ったものだ。もちろんあまり和みすぎても、かえって営業モードにはならないこともあるのだが。
[教訓]
〇リラックス状態を相手にも与えて、信用度を高め営業を仕掛けよ。