織田信長に学ぶ、
織田信雄は伊勢へ軍勢を進行させ制圧しようとしたが、柘植三郎左衛門が討ち死にした。信長は上方(摂津方面)へ出陣せず勝手な合戦をするのはけしからんと言う旨の書状を送った。その内容は次の通り。
「この度伊賀の国境で負け戦をしたそうだが、誠に天の道理に背く恐ろしいことで天罰と言える。お前は上方へ出陣すれば伊勢の武士や民衆が苦労をするというので、隣国と合戦すれば他国への出陣を免れるという意見に引きずられ、若気の至りで、この度の事態となった。上方へ出陣すれば、それは第一に天下のためになり、父への孝行、兄への思いやりとなり、お前自身の功績となった。三郎左衛門その他を討ち死にさせたのは言語道断。・・・親子の縁を切ることになると思うがよい。」
(解説)
信雄は前述の通り、信長の次男で、北畠家の養子である。信雄の指揮により、柘植三郎左衛門が討ち死にをした。しかも信長の言いつけを守らないことが問題であった。信雄はしかも部下の顔色を見て、上司の命令に背いたことになる。
ミドルマネジメントのつらいところは、上だけを見ているわけにもいかず、下だけを見ているわけにもいかず、両挟みになってしまうことだ。
上司のやっていることが会社の経営理念や社会性に反することであれば、身を挺して部下を守るのもまたマネジャーとしての役割だが、通常は、ミドルマネジメントも組織内の一人であり、上からの命令に従うことの方が道理と言える。
単に、会社の方針がこうだの、上がこういっているから仕方ないよな。サッサと言われることはやれ、という言い方だと部下は納得ができない。部下も人間だから、会社が部下に対してその真意を隠さなければならないときはやむを得ないとしても、なぜ会社はこのような方針かと言うことを、ミドルマネジメントは部下にきちんと伝えられるだけの論理的かつ合意的な説明責任を負うと言えよう。
これからやる仕事は、何のためにやっているかを部下がきちんと理解した方が、部下としても会社のために働いているという気になるし、モチベーションは上がる。会社の仕事に参加しているという気になるためだ。
その点を伝えきらないと、部下はいやいやながらやることになり、思った成果が得られなくなる。部下がやる気のあることだけしか上司が依頼できなければ、会社のスタッフとして雇っている意味がない。部下がやりたいことか、やりたくないことかは関係がない。ましてや顔色なんてうかがわなくていい。それが組織だ。だが、できるだけ部下に気持ちよくやってもらうためにはどうしたらいいかを考えよう。
[教訓]
〇部下の顔色を気にしすぎるな。
〇部下がやりたいことをやらせ、やりたくないことをやらせないのであれば、組織ではない。なるべく仕事を部下がやりたい気持ちにさせよ。