織田信長に学ぶ、
織田信長の攻囲を受ける石山本願寺は、西国の大名、毛利輝元に兵量や武器等の援助を求めた。対する信長は、佐久間重盛を本願寺攻めの主将として天王寺に置き、さらに本願寺の至宝に十か所の付城を築き、住吉の砦に和泉の水軍を配置して海上の備えとした。
大阪周辺には本願寺の味方はおらず、陸上の包囲は充分であったが、海上については包囲ができなかった。あるとき、兵量を積んだ毛利方の軍船が大阪湾に姿を現した。800艘も之大船で構成されている村上水軍であった。住吉に待機していた和泉の水軍が出動するが、数だけでなく、舟の装備、操船技術、兵器も村上水軍の方が数段勝っており、炮烙火矢という火薬を使った兵器を雨あられと打ち込まれ、和泉の水軍は大敗した。そして村上水軍は被害もなく本願寺に兵量をいれ、引き上げていった。
(解説)
海上封鎖と言う狙いはよかったのだが、敵の実力をまるで見誤ったことによる壊滅的な大敗であった。
ビジネスの世界において、特に新規事業ではありがちだ。元々全く経験がないことをやると、経験がないがゆえに自分はできると勘違いする。何故ならばリスクを把握していないからだ。リスクはビジネス上のコストであって、コストがなければ売り上げがすべて利益になると考えてしまう。それにできないことがわからないから、できると勘違いしてしまうのであろう。経験があれば、できるかできないかがよくわかる。もちろん経験がありすぎて、できることでもできないと思ってしまってもまたいけない。
加えて、顧客ニーズがまるで分らないから、自分自身が顧客そのものだと勘違いして、自分が欲しいものを商品化して販売しようとしてしまう。
新規事業において一番大切なのは、見切り発車よりも事前準備だ。機材を買いそろえるとか、事前に潤沢な資金を持っておくとか、テクニック上の話ではない。本当にその商品やサービスを顧客が欲しがっているのか、どうすれば買ってもらえるのか、そしてどれくらいの人がかってくれるのかといったことを事前でどれだけ把握できるかである。むしろ事前準備と言うよりは事前調査に時間を割かなければならない。
新規事業も右も左もわからないことはやってはいけない。新しい分野で、今までの経験でプラスになることはないか、あるいは今までの経験の中で新しい切り口はないかを探すことである。今までの経験がベースになる限り、いくら新しいことをやったとしても、リスクは小さくなるはずだ。
[教訓]
〇新しいことをやる場合には、事前調査を行え。
〇流行していて、儲かりそうだと思っても、右も左もわからないことはするな。
〇お客が欲しい商品を作れ、どれくらいのお客がその商品を欲しいかどうかで判断せよ。