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演繹法や帰納法は詭弁術に使うな

騶衍は、当時の国王がますます淫逸奢侈となり、昔の大雅に歌われているように、得をたっとんでこれをわが身に修め、ひいては庶民に及ぼそうとする者がないのを目の当たりに見た。そこで、深く陰陽二元の消長変化を感得し、「怪迂之変」「終始大聖」等の諸編十余万語の書を著した。その文章は閎大で普通の概念に合わず、必ずまず小事について実証してから、これを押し広めて無限の大事に及ぼすのであった。歴史についても、まず現在から遡って黄帝に至るまで、世間の学者が皆述べることを叙述したのち、ついで世の盛衰に及ぶのである。

(解説)
まずはタイトルにある、孟子、荀卿(子)は前者が性善説、後者が性悪説を唱えた人物である。性善説とは人間は生まれながらにして善であるという思想、性悪説とは人間は生まれながらにして悪であるという思想である。そもそも孟子は、人間の本性として四端(仁・義・礼・智)があると述べ、これを伸ばさなければけだものと同じだと説いた。伸ばすために学問をして努力せよということなのだ。それ故、性善説も性悪説も、学問を通じて人間が徳を身に着けると説く分には変わらない思想なのである。

次に上記、騶衍の言葉は長いが、要するに演繹法と帰納法のことを言っている。小さなことから大きなことへというのは演繹法だし、今から昔にさかのぼるのは帰納法である。

演繹法とは一般的・普遍的な事例から、個別的・特殊的な結論を得る方法である。逆に帰納法とは、個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則や法則を見つける方法である。例えば、帰納法では、人であるソクラテスは死んだ、人であるプラトンは死んだ、人であるアリストテレスは死んだ、それゆえに人は全て死ぬと考える。演繹法とは人は死ぬ、だからソクラテスもプラトンもアリストテレスも死ぬと考える。

演繹法のメリットは前提が正しければ、結論の真偽は揺るがないものとなります。その代わり、デメリットとしては因果関係と相関関係を見誤ると全く正しくない結論を導いてしまう場合があります。例えば、交番が多い地域は犯罪が多いと考えたとする。そうすると鋼板を作らなければ犯罪はゼロになるという結論さえ導いてしまうが、それが違和感があることはよくわかるだろう。

帰納法のメリットは、経験から一般化していくので多くの人に伝わりやすかったり、法則等の新しい発見を生むことができる。デメリットとしては情報量が足りないときや、他の要素が複雑に絡まっているときに、用いると誤った結論を導くことになる。例えば、受験勉強は時間をかければ有名大学に受かる、というならば、70歳まで勉強すれば受かる、と言えなくもないが、それが時間の無駄であることはわかるだろう。

いずれにしても、相手を説得するときの道具としては、演繹法と帰納法のメリットを生かすのがよい。決して詭弁に使わない方が良い。ひたすら嫌われる。

[教訓]
〇演繹法と帰納法は相手を説得するためのツールとしては使えるが、詭弁のツールにすると嫌われるのでほどほどにせよ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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