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まずは従業員に施せ

「天の天とするところを知る者は王事成すべく、天の天とするところを知らざる者は、王事成すべからず。王者は民をもって天とし、民は食をもって天とする。」

「漢王と項王とは力を合わせて西の方秦を撃ち、先に咸陽に入ったものが王となることを約束しました。しかるに項王は約束に背いて漢王に咸陽を与えず、漢中の王としました。項王はまた義帝を追放して、これを殺しましたが、漢王はこれを聞くと蜀・漢の兵を起こして三秦を撃ち、函谷関を出て項王に義帝の処置を責め、天下の兵を収め、諸侯の後を絶て、城を下せば将を候に取り立て、財貨を得れば士に分け与え、天下と利益を共にしたので、豪傑英雄賢人才子は皆喜んで漢王の使役に甘んじ、されば諸侯の兵は四方から集まり、蜀漢の粟は船を並べて長江を下っています。しかるに項王には約束に背いた汚名と義帝を殺した負い目があり、人の功労は認めず、人の財貨は忘れません。城を抜いても封地を得られず、項氏の一族でなければ政治に携わることができません。人を諸侯に封じて候印を刻しても、もてあそぶだけで授けるのを惜しみ、城を攻め財貨を得ても、手元に積むだけで賞賜することができません。こうして天下の市は彼に背き、賢人才子は彼を恨み、その使役に甘んずる者はおりません。だから天下の士を漢王に帰服させるのは、座っていても策れるのです。かの漢王が・・・三十二城を抜いたのは、蚩尤の兵に比ぶべきもので、人の力ではなく、天の与えた福であります。」

(解説)
前段は酈生が劉邦に語ったもの。天とは、社会の望むものであったり、事業のタイミングと言ってよいだろう。そして忘れてはならないのは、王にとっての天とは民であり、民にとっての天とは食である。つまり、経営者にとっての優先順位は、顧客や従業員にあり、従業員にとっての優先順位は給料であり、顧客にとってのそれは会社のサービスによる満足度である。

後段は斉王に語ったものである。劉邦が天下を取った理由は、約束を守り、ケチらず、どんどん分け与えたことだ。つまり会社が大きくなればなるほど、自分もだが、それ以上に部下の取り分を増やしてやることが大切である。そうしてやればおのずと自分の取り分もまた増えていく。まさにギブ・アンド・テイクである。こういう噂が立てば、向こうから勝手に優秀な人材がやってくる。

項羽が天下を取れなかった理由は、約束を守らず、気に入ったやつ(あるいは親族)しか出世せず、自分の懐を肥やすだけ。

つまり経営者は自分の取り分を増やしたければ、まず自分の取り分を増やすのではなく、部下の取り分を増やしてやればいい。もちろん実績に応じてだが。実績もないのに配ってもいいことはない。自分の取り分は、後で勝手に増えていく。つまり自分の力ではなく、天からの恵、これのみが役員報酬である。

[教訓]
〇経営者にとっての優先順位は、顧客と従業員の利益。顧客にとっての優先順位は会社からのサービスの満足度、従業員はやりがいや給与。
〇自分の取り分なんて後回しにした方が、勝手に増える。給料は実績で配分、役員報酬は福としての配分と言う考え方が自然である。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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