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公平性ではなく透明性のあるルール決めをせよ

漢王(劉邦)は、しばしば使いをやって彭越を召し、協力して楚を討とうとしたが、彭越は「魏地はようやく平定されたばかりで、国人は今なお楚を恐れています。まだここを離れることはできません」とて応じなかった。そこで張良に「諸侯の兵はわしの命令に従おうとしない。どうすればよいだろうか」と問うたので、張良が言った。

「斉王信が王になったのは、元々わが君の意向によったのではありません。・・・また彭越は、元梁の地を平定して功労が多かったのに、当時、わが君は魏豹のことで越を魏の宰相としました。いまや豹が死んで後継がなく、越も王になるのを望んでいるのですが、君には一向に立てられようとされません。今、斉・魏両国を与えて彼らと盟約するなら、たちどころに素に勝つことができましょう。・・・君がもし土地を与えられるなら、今すぐにも不たちを招致することができましょうが、もし与えられないなら事のなり行きは予測できないのであります。」

漢王は張良の方策を入れ、使者を彭越の下にやった。使者が就くと、彭越は手兵を悉く率いて垓下に会戦し、ついに楚を破った。

(解説)
人が動く動かないというのは、そんな複雑な理由でもなかったりする。そして、動かしたい人の心のストッパーを外すのは、時には、金で解決したりもする。

彭越においては、功労が多かったのにもかかわらず、あまり自分を評価されていないと感じていたこともある。

動かされる方のニーズをどこかで確認してみるのも良い。つまり、被用者が何で動くのか。中には単純にカネだったり、役職だったり、自分がやりたいことをやらせるとか、名誉だったりもする。正直、何でお前は動くんだと直接聞くのはナンセンスだ。いつの間にかにじょうしが、自分を動かす術を心得ている、と言う方が、より従う気持ちが強くなる。普段の仕事に対する態度、そしてたまに飲みに行ったりして、その人の関心事を知ろう。

あと難しいのは、動かされる方の欲望の大きさと、動かす方の得られる便益を比較衡量することと、それによって満たして上げた欲望の大きさと知ったときの、他の会社のメンバーとの釣り合いでもある。最初のうちは、経営者の胸先三寸でやるしかないが、公平感というものは、相手の感じ方にもよるからどうにもならない。そのうち、きちんと配分のルール決めを行っておかないと、もめることにつながるし、組織としてのまとまりもなくなる。最初からそう言っておいたでしょ、と釘を刺しておく、そういう報酬ルールを早く確立して置こう。

でもあまりに欲望の大きな人間は、会社の組織に置いておくと不都合が大きいから、去りたければ追わないようにせざるを得ない。

[教訓]
〇部下の本当に欲するものは何かを探り出そう。一律、「金」ではないことを知っておいた方がいい。
〇透明性のある報酬ルールの確立をせよ。公平感ではない、透明性で十分だ。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
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