「人の貴賤は骨相にあり、喜憂は容色にあり、成功失敗は決断力にあります。」
「天の与えるに受けなければ、かえって咎めを受け、時のいたるに行わなければ、かえって災いを受ける」
「人の車に乗るものは、共に人の愁えを乗せ、人の衣服を着るものは、共に人の愁えを抱き、人の食を食む者は、共に人のことに死す」と言う言葉を聞いているが、わしは、なんと利をおうて義に背くことができようか。
(解説)
蒯通が韓信は天下のキャスティングボードを握っているということを知り、つまり韓信が従った方が王になるということである。そこでその気にさせようと色々と語った言葉である。蒯通は観相学がわかるといって韓信に近づいた。これは、顔立ちや表情から、その人の性格や気質、才能を判定しようとするものである。ここにある骨相とは、頭蓋骨の形で貴賤がわかるという。そこでおでこが広い方が貴そう、頭がよさそう、ということで昔の肖像画にはおでこの広い人が多かったようだ。武士がおでこを広くしていたのも、そんな理由があったのであろうか。なお、容色とは顔かたちのことである。これだけで判断されては、と思うこともあるが、最後の「成功失敗は決断力にある」と言われれば、それはそうねと同意したくなる。決断力がない人間は大失敗はないが大成功もない。単にジリ貧になっていくから、決断力がなければ小失敗と言ったところではないだろうか。
第二段目も蒯通の言葉だが、天がせっかく与えたチャンスをものにしなければ、良くないことが起きるということである。人生にはそれほど多くのチャンスは巡ってこない。チャンスをものにしなければ、そのままである。しかしそれが本当にチャンスなのかどうか迷う時がある。でも迷ったときはチャンスではないと思うことにしよう。
第三段目は蒯通に色々背中を押されるが、そうは言っても、劉邦を裏切るわけにはいかない。もちろん王になるということは利ではあるが、義に背くことはできない、と言ったわけだ。最終的には義に背く羽目に陥ってしまうのではあるが。
もちろん、一宿一飯の義理は持つべきだと思うが、それでもこれがチャンスだと思ったら、裏切るわけではなくて、せめてチャンスを生かそうと思っても良いと思われる。いつまでも雇われ人であり続け、それが義だと思ったら大間違いだ。あなたがトップに立った方がより多くの人を幸せにできると思ったら、退職してリーダーになることを躊躇してはならない。
[教訓]
〇物事の成功や失敗は決断力にある。
〇天がくれたチャンスは遠慮なくモノにしよう。
〇サラリーマンで居続けることが義ではない。