世界の歴史を題材とした起業家応援メディア

やってみないと分からない。やらせてみないと分からない。

韓王信が謀反した。高帝は自らいってこれを撃とうとし、晋陽に着くと、信と匈奴が共同して漢を撃とうとしていることを聞いた。主上は大いに怒って、使者を匈奴に遣ると、匈奴は壮丁と肥えた牛馬を隠し、ただ老幼婦女と痩せた家畜ばかりを見せた。使者は十人行ったが、帰ると、いずれもみな「匈奴を撃った方が良い」と報告した。主上は重ねて劉敬を匈奴に使いさせると、帰って「二つの国が戦う時は、互いに自分の長所を誇示しようとするものですが、この度私が目に映ったのは、ただやせ衰えた老幼婦女だけでありました。これは短所を見せて伏兵を置き、勝利を得ようとする者に他なりません。愚見では、強度を撃ってはなりません」と復命した。

しかるに、もはやこのとき漢の兵は句注山を越え、二十余万の大軍が既に北方に進軍していた。それで主上は怒って劉敬を罵り、「斉の捕虜めは口舌の才で官を得たが、いままた妄言してわが軍を阻もうとしている」と言い、手かせ首枷して広武につないだ。かくて進軍して平城に着くと、はたして匈奴は奇兵を出し、高帝を白登山で包囲した。七日してようやく囲みを説くことができたので、高祖は広武にゆき、敬を赦して、「わしはそなたの言葉を用いなかったため、平城で困苦した。わしは既に『匈奴を撃った方がよい』と不無名下前の使者十人を斬ってしまった」と言い、敬を食邑二千戸に封じ、建信候と号した。

(解説)
匈奴と韓王信が共同で漢を撃とうとしていて、使者を匈奴にやると、兵士もいなければ、家畜も痩せていた。そのため、今が攻め時だと考えた家臣がいて、劉邦(高帝)もその気になっていたが、劉敬だけが冷静に見ていた。「伏兵がいる」と。劉邦はビビってるだけだ、士気を下げると劉敬を牢屋にぶち込んでしまった。しかし、その言葉通り、伏兵に襲われ、劉邦はえらい目に合った。それで劉敬を報償した。

とかく経営者もイケイケガンガンと攻めたがる。これは決して悪いことではないのだが、誰かが諫めないと、大変な目に合う。しかし少しブレーキをかけようとすると、経営者からは、あいつは仕事をしたくないとか、残業、土日出勤をしたくないからだという目で見られる。そのため、経営者がイケイケガンガンの時には、社長に従え、として誰も諫めようとしない。いわゆるイエスマンである。社長の言うとおりにしておけば、上手くいかなかったとしても社長の責任だ。うまく行ったら、ああよかったということになるだけだ。実際には従業員の仕事が増えて大変になるのだが。

少し、無理をさせた方が組織としては良いこともあるが、限度はあろう。店舗も「規律なき拡大路線は衰退への道」ということだ。あまりに急ぎすぎると、規律が保てなくなる。加えて、自社の店舗で顧客がカニバルこともある。

ただ経営者もやってみないと分からないこともある。そしてやってみて初めて、失敗だと気づくこともある。上記例であれば、韓王信が何故に漢にたてついたか、その理由を考えてみれば、劉敬の考えも腑に落ちたろう。

いつの間にか、店舗数を増やすだけが目的になってしまうと、イケイケガンガンとなって、盲目となる。最大化よりも極大化、最適化を目指すべきであろう。

[教訓]
〇経営者も売上至上主義、店舗拡大主義に陥ってしまうと、マーケットの最適化が見えなくなる。
〇従業員は、経営者のイケイケガンガンを諫めることも必要だ。聞いてくれなければ辞めるのを覚悟でよい。どうせ破綻する。

この記事を書いた人
経営学博士。経営学は座学より実学をモットーに大学院在学時より、サラリーマンで修業。一部上場企業の財務、メガバンクでの不良債権処理、 上場支援、上場後の投資家向け広報、M&A、事業承継等を経験。 数千の経営者と身近に接することが多く、数多くの成功例や失敗例を見てきた。 一人でも多くの成功者を輩出することが自らの天職と考え、現在は独立し、起業家に対して、ファイナンスやマネジメントまわりのサポートを行っている。 起業家モチベーター。
SNSでフォローする